昨日、生化学若い研究者の会(通称:生化若手の会)主催のフォーラム「価値ある博士号取得者になるために必要なこと」に呼ばれてお話をしてきました。
私以外の登壇者が、吉田文先生@早稲田大学と森郁恵先生@名古屋大学と「全員女性」っていうのも興味深いことでした。
3人の講演の前に「生命科学夏の学校」で行ったアンケート「質の高い博士号取得者はどのような素養を身につけた人材であるか」の結果として、上位に「問題解決力」「コミュニケーション力」が挙げられたということが紹介されました。講演後のパネル討論ではそれを受けての議論があったのですが、「問題解決力は<普通>であり、質の高い博士号取得者を目指すのであれば、それ以上でなければならない」という点において登壇者の意見が一致していました。
「問題解決力」という言葉からは、「問題はどこかから・誰かから与えられる、それを解決する」というような意識を感じます。おそらく、大学受験、大学院受験までは、そういう能力を鍛えるように訓練されているのだと思います。でも、大学院以降は、一流の研究者になるためにも、博士号取得者として違うキャリアパスを目指す場合も、「<問い>を立てる力」つまり「問題発掘力」や「問題設定力」が重要なように思います。
パネルの最後にフロアから「ではどうやったら<問題設定力>を上げられますか?」という質問が出て、「セミナーに参加したときなど、背景を聴いている間に<自分だったら、どんな問いを立てるか、どうやって解決するかをシミュレーションしてみては?」、「他の広い研究分野を知ることによって、未解決の問題や、解き方のツールを発掘する」などのアドバイスが為されました。
自分の発表では「<タグを付ける>ことと、ネットワーキングが大事」ということに加えて、依頼されていた「研究倫理」関係の話をしたのですが、結局時間が足りなくて用意したスライド、使い切れなかったので、こちらに貼り付けておきます。
このスライド、「価値ある博士号取得者として備えるべき素養」に対する私なりの考えというつもりで用意したのですが、5つの「力(ちから)」がカタカナの「カ」に見えるのが面白い(ウコンの力、とかですねww)ので、それをジョークに使おうと思っていたのです(←ネタバラシww)。でも、パネル討論のときに「英語や国語など書く力が大事」ということだけは伝えました。
3つの「性」のところに「計画性」を加えることもありだと思っています。とくに時間を「逆向きに捉える」ことが大事で、「今日、これこれをやったから、明日はこうしよう」だけではなく、「いついつまでにこうしなければならないから、その前のいついつまでにこれこれをしよう」という計画を立てることができるかが大事だと思います。
これらは、すべての点において卓越していることが大事、というよりも、自分の個性を自覚することが大切だと思います。その足りないところを、友人や同僚と協力することによって補うことができるからです。高学歴の方は往々にしてプライドが高いことがあって、他人に相談しないことも多いですが、自分の欠点を素直に認めることは、どんな世界でサバイバルするたえにも鍵となるでしょう。
多様なキャリアパスについては、サイエンス・ライター、科学雑誌編集者(日本語でも英語でも)、ジャーナリストなどもありましたが、スペース不足により割愛。ただし、これらはみな「書く能力」や「取材する力」が必須です。画才があればサイエンス・イラストレータなどもニーズは大きい(ただし、きちんと職業として認知されリスペクトされることが必要)。もっとマルチなタレントを活かしたキャリアパスもあると思います。森先生のお話の中には、森研出身でURAになった方のことが取り上げられていましたね。「研究担当や国際対応の理事の下で活躍する」なんてURAは、かなりやりがいのある仕事だと思います。その場合には、やはり「自分で問題を設定する能力」が求められるでしょう。
フォーラム後に主催者、パネリストを囲んでの懇親会もあったのですが、都合により失礼させて頂きました。皆さん、盛り上がったかな?