SfN2014出張(その1):フロリダ大学に行ってきた

数年前から毎年、参加することになった北米神経科学大会(Society for Neuroscience, SfN)ですが、今回は学会の前にフロリダ大学の共同研究者のところに寄って来ました。
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数年前からAssistant Professorとしてフロリダ大学に研究室を構えておられる染谷慎一先生に、2つのセミナーとその間の訪問先をアレンジしていただき、充実した一日を過ごすことができました。


一番印象的だったのは、Institute on AgingのDirectorであるMarco Pahor先生との面談でした。一面ガラス張りの窓に向かって「トレッドミル」が置いてあり、さらにハイ・デスクが……。伺ってみると「ゆっくり歩きながら、PCのモニタをブラウジングしたり、簡単なメールの返事くらいなら打てますよ!」とのこと。

大隅(O):素晴らしい! 腰にも良さそうですね♬
Pahor先生(P):やってみましょうか。ほら、こんな具合です。ええと、昨日は会議が多かったから、20分くらいしか使っていませんね。こんなふうに記録も取れます。……貴女もどうぞ!
確かに、なんとかなりそうでした。さすが、加齢研究を総合的に行う研究所所長だけのことはあります。
P:PIにもstanding desk(後述)やトレッドミルを購入しても良いと言ってあります(←太っ腹! いえ、先生はとてもbody conciousですが……ww)

O:建物自体も素晴らしいデザインですね!
P:この建物は、NIHから建築の予算を獲得し、さらに大学の資金も合わせて建てました。エコ基準(ecologically concious)の新しい建物とするために、業者の選定からデザインまで1年かかりましたが、その後、竣工までは比較的早く進みました。
P:どんなところが「エコ」なんですか?
P:屋根にはソーラーパネル、この絨毯の素材はリサイクルで、他にも環境に不可をかけない部材を多く使っています。庭の植物もこの地域のものです。
O:素晴らしいですね! 
P:そのほか、研究者同士がなるべく交流できるようなオープンなスペースになるよう心がけました。
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その後、研究所の中を自らご案内頂きましたが、臨床研究の被験者の方が廊下で歩く早さや階段を昇る早さを測ったりするスペースがあったり、採血室やMRI等各種測定装置の設備も充実しています。この建物の中には、染谷先生のように基礎研究を行う研究者もオフィスを構えているのですが、常時訪れる患者さんとすれ違うことも多いことでしょう。そんな環境そのものが基礎研究者の心理にも影響を与えていると思います。

実は上の画像を見て頂くと、染谷先生のオフィスにも高さを変えられるstanding deskが! これ、今度ぜったいに買います。もしかしたらラボにトレッドミルも買います(笑)。運動による神経新生向上は、研究にもポジティブに働くはず!ww

セミナーでは、染谷先生との共同研究になっている加齢性難聴のアンチエイジングな表現形を示すマウスの話を中心として、脂肪酸結合タンパク質の機能に関して、その研究に至った経緯から、精神疾患との関係についても触れ、最後に進化医学的な考察を加えました。

ちなみに、日本以外でセミナーをする場合、ほとんど時間帯はランチ前後。これは夕方は子どものピックアップなどに絡むので出席率が下がるからです。育児の共同参画が進んでいるからですね。



SfN2014出張(その1):フロリダ大学に行ってきた_d0028322_21094550.pngランチは女性PIの方々と。Department of NeuroscienceのChairをしているLucia Notterpek先生(向かって左側の方)によれば、「バイオロジーでは女性は半数いますが、Assistant Professorの女性は半数ということはないですね。テニュアの女性はとても少ない。まだ、white menが圧倒的です」と話されました。もう一人のChristy Carter先生はDivision of Career Development and EducationのAssistant Professorという肩書も持っていますが、ラットを使った実験もしている方です。


それから、さらに2名の日本人PIの方とも面談の時間を取って頂いたのですが、そのうちのお一人、笠原秀子先生は、なんと母校の1期上の先輩であることが判明! 世の中狭いです……。笠原先生は名古屋大学の医学部のご卒業ですが、当時生理研にいらした故月田承一郎先生のところで学位を取られ、その後、ポスドクとして留学してこちらで独立されたとのこと。月田研の昔の業績集の中に、何人もの知り合いの研究者の若い頃の顔写真があって懐かしく思いました。

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もうお一人の寺田直弘先生は(あ、画像を撮りそこねました……)、阪大のご出身で、当医学系研究科の堀井先生と同期ということから、うちの医学部学生さんも何人か、基礎修練の期間に研修させて頂いているそうです。お世話になっています……m(__)m 

さらに、McKnight Brain InstituteのExective Directorである芦澤哲男先生という方もいらっしゃるのですが、生憎、ご出張と重なりお目にかかれませんでした。ぜひ次の機会があればと思っています。

所長秘書のLaura Ponsさんにそれぞれの訪問先へのエスコートをして頂いて(感謝!)怒涛の面談を追えてから、夜はフロリダ大学日本人勉強会という組織の主催でセミナーをさせて頂きました。ちなみに、海外の日本人研究者コミュニティーの団体は、下記の全世界日本人研究者ネットワークにまとめられています。


こちらでは25名くらいの参加者を前にキャリア・ディベロップメント系のセミナーを行い、最後、お昼のセミナーとは別の話題(父親加齢による自閉症発症リスク増加のメカニズム解析)もしましたが、生命科学系以外の方も多数来られていたのに、ついつい、専門用語が多くなってしまっていてすみません……。それからここでもなんと、母校の後輩!(四半世紀年下)が! 世の中はさらに狭いです……。

染谷先生には空港との送り迎えなどもして頂いて、本当にありがとうございました。次回、日本に来られるときにセミナーをして頂くことをお約束して頂きました。
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by osumi1128 | 2014-11-16 21:17 | 旅の思い出

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