日米先端工学シンポジウム(JAFoE)終了

今朝は6時まで目が覚めなかったところをみると、体が現地時間に慣れてきたのだろう。
5月にギリシアへ行ったときはこのあたりで失敗して、朝寝坊して飛行機に乗り損ねたことを思い出す。
今晩からはちゃんと目覚まし時計をセットしなくては。

さて、今日午前中は自分のオーガナイズするセッションがあったのだが、そもそも日米先端工学シンポジウムをちゃんと説明していなかった。
元々はアメリカで工学分野の異分野交流・若手エリート育成のためのForum of Engineeringというシンポジウムがあり、それをさらに国際版にして、Germany-America FoEやJapan-America FoEができた。
スピーカーも一般参加者も原則45歳以下のメンバーで構成され、4つのセッションで3日間缶詰になる。
アメリカはNational Academy of Engineeringが、日本側はJSTと日本工学アカデミーが共催。
過去の開催についてはこちら
ちなみに、似たようなフォーラムとして、日米先端科学会議(JAFoS)もあり、こちらはNational Academy of Scienceと学術振興会が共催。

JAFoEには昨年からオーガナイザーとして参加しており、今回はやはりBiotechnologyのセッションでもう一人のオーガナイザーであるAllan RussellとともにDetection and destruction of pathogenというテーマで行った。
スピーカーは
Michael Connolly: Integrated Nano Technologiesという会社のCEO
Jennifer Sekowski: Edgewood Chemical Biological CenterというUS Armyの研究所
坂口末廣:長崎大
八谷如美:東京医大

Dr. ConnollyはDNAを使ったnano-chipでバイオテロを想定した病原微生物を検出しようとするもの、Dr. Sekowskiはサリンなどの暴露を受けた際に、どんな遺伝子が反応するかをマイクロアレイで調べていて、どちらもDepartment of Atomic Energyからのサポートを受けている、すなわち軍関係。

坂口さんはプリオン病に対するワクチンの開発の話をされた。
八谷さんは現在金子清俊先生とともに神経センターから東京医大に移られた方だが、月田承一郎先生のところでERATOの研究員だった折に酵母で発見したUnfoldin (Oligomeric Aip2p)がタンパク質の高次構造をほどく作用を持っており、高度に凝集してしまうプリオンタンパクの検出感度を上げるのに役立つ可能性について述べられた。

狂牛病のことはアメリカの一般市民にはあまり知られておらず、「どんな病気か初めて知った」という参加者もいた。
また「そんなに発症率が低いのに、何故気にする必要があるのか? マラリアの方がずっと患者が多く、その治療法は開発されていない」などの意見も出た。
ランチのとき同じテーブルだった人に「日本ではすべての牛について検査を行っている」と言ったら本気でびっくりしていた。
思わぬ異分野交流の効果である。

ところで、一昨日のAfter Dinner Lectureがベンチャー起業の話題であったが、まさにDr. Connollyはそういうキャリアである。
参考のためにその履歴を書いてみると、
Northwestern Universityで分子生物学のPhD取得→University of Illinois Medical Center in Chicagoで微生物学のポスドク→Cornell Universityで法学博士取得→特許事務所で弁理士としてゲノム関連会社や大学などのライセンス化の仕事→ナノテク会社設立
ということである。
正確な年は聞かなかったが、どんなに多くても45歳程度である。
「会社社長」というイメージとはほど遠く、まあ、それはこういう研究者の集まりだからでもあるがノージャケット、ノーネクタイで、そのへんのアンチャンと変わりない。

日本でも法科大学院がたくさんできたので、バイオ系のポスドクをしてから(学位を取ってからすぐでも良いが、少しお金も稼ぐ時間も必要か)法学博士取得という道もあると再確認。

Dr. Sekowskiの方はMaryland School of Medicineで分子細胞生物学の博士取得→同じ研究室でポスドク→政府関係の研究所である。

ポスドク問題については「自己責任論」と「救済論」があり、どちらも必要ではあるが、「救済論」(あるいは政府の責任)で何かすぐできるとしたら、官公庁および関連独立行政法人での雇用先を考えることだと思う。
また、日本国内で「ポスドク就職・起業セミナー」を開催するだけでなく、実際にここシリコンバレーやボストンエリアなどでベンチャー企業や大学を訪問する「ツアー」を組むのも面白いかもしれない。
by osumi1128 | 2005-11-06 10:17

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