先々週末に
ノーベル・プライズ・ダイアログ東京2015という催しにパネリストとして参加しました。日本学術振興会とノーベル財団(正確にはノーベル・メディアABという組織)との共同主催によるもので、スゥエーデン国外では初めて東京で開催されました。(以下、
文科省発表より)
本イベントは、2012年より毎年スウェーデンにおいてノーベル賞授賞式の時期に開催されている一般向けの公開シンポジウムである「Nobel Week Dialogue」をスウェーデン国外で初めて開催するものです。本イベントでは、学術に対する社会の関心・理解度を高め、学術の振興に寄与することを目的とし、国内外から招いたノーベル賞受賞者を含む著名な研究者や有識者が一堂に会し、学生や研究者を含む広く一般を対象として開催します。
山中先生は、iPS細胞研究のこれまでとこれから、について話されましたが、全体のテーマとしては生命科学、とくに「ゲノム科学」をどのように捉えるかというのが中心でした。
自分の登壇したのは午後のパネル・ディスカッションで、これまた、3セッション同時進行、全6コマという盛りだくさんメニューの中で、「アジアにおける研究インターフェースの進展」というテーマで、田中耕一先生(「Dr.ではなくMr. Tanakaと読んで欲しい」としきりに仰っておられましたが)、浅島誠先生とご一緒でした。他のパネリストは、欧州研究会議の理事長を務められた
Helga Nowotny博士と、現在東大准教授の
Beate Heissig博士でした。Nowotny先生は午前中に科学と社会との関わりについてのトークもされました。
田中先生から口火を切られて「これからは融合研究が大事。そのためには人材の多様性が重要」という趣旨のご発言をされ、さらに「私は漫画が好きなのですが……」と、日本独特の直感的な視点が、西洋科学と融合すべきというようなご意見を述べられていました。私はそれを受けて「どこまで<アジアの>ことについて話せるかは難しいのですが、女性の参画も多様性という意味で重要」ということと、「多様性のために皆がコミュニケーション手段として<英語>を使うが、そのことによって実は多様性が失われる危険がある」という指摘をしました。言語は思考を規定します。田中先生も「どうしても英語に翻訳できない日本語もある。そのような文化も大事」とのご意見。興味のある方は、どうぞ以下のサイトから、それぞれの動画を御覧ください。
ともあれ、思いの外、センスの良い全体ディレクションだったのは、ノーベル・メディアのノウハウも得てのことだったのでしょうか? 全体の司会をされた
アダム・スミス博士の仕切りはさすがでした。彼は、ロンドン出身でオックスフォードで学んで、ポスドク後に自分のラボも持たれた方ですが、Nature Publishingを経て、ノーベル・メディアでの仕事にやりがいを感じて転身したという経歴の持ち主。こういう人材もノーベル賞を支えているのだと実感しました。
ちなみに、前日のレセプションのディナーで席が隣だったので、「
とても有名な方と同じお名前ですよね?(微笑)」と訊いてみると、「あー、毎年、受賞者が決まって発表された直後に電話をかけて、HP掲載のためのインタビューのお願いをするのだけど、まぁ、生理学・医学賞の受賞者は普通に応対してくれるんだけど、経済学賞の受賞者のときは、私が名乗ると嘘だろうと思って電話を切られることがありましたね(笑)」とのことでした。そりゃー、アダム・スミスだものね……。
前日にスゥエーデン大使館で開かれた関係者レセプションには、高窓宮妃もご出席でしたが、お言葉が無かったのはちょっと残念。ともあれ、国内外から合計7名ものノーベル賞受賞者を招いて気合の入ったイベントでした。ノーベル生理学・医学賞の発表でお顔は何度も拝見している
ヨーラン・ハンソン博士に会えたのも感激。

画像は本イベントの立役者でもある東大の宮園浩平先生、山中先生との記念の3ショット。
【追記】
本日、2回めの週刊ダイヤモンド連載記事が出ました!
