1つの例を挙げておこう。山中伸弥さんはマウスの普通の皮膚の細胞を多能性のある未分化な細胞に初期化することができることを示して、2006年のCell誌に発表し、翌年、ヒトの細胞でも再現できるとCell論文が発表され、それが2012年のノーベル生理学・医学賞受賞に繋がった。この日本中で有名な研究成果のヒントを与えた論文は、京都大学の多田高さんが2006年にMethods in Molecular Biologyという雑誌に発表したものである。この研究では、線維芽細胞という普通の細胞を多能性未分化細胞の本家である胚性幹細胞(ES細胞)と融合させると、線維芽細胞が初期化される、という興味深い現象を示している。