東北大学医学部の艮陵同窓会の年一回の総会に合わせて行う公開講演会は多数の市民が参加されますが、今年の講演者は福岡伸一さん。
大ベストセラーの『生物と無生物のあいだ』や『世界は分けてもわからない』など、生命科学研究寄りのご著書もあれば、フェルメールとレーウェンフックの関係を推理した『フェルメール 光の王国』もあり、フェルメール好きが高じて37点を原寸大ですべてディジタル化し、作品の制作順に並べた展覧会を主催するなど、幅広い活動をされています。毎年、1年生や2年生の講義の際に配布する「大隅推薦図書」にも必ず取り上げているのは、
Nature論文の著者としての顔もお持ちだからです。
今回のご講演のタイトルは「生命をとらえなおす〜動的平衡の視点から〜」で、生命体をメカニカルで素子から成り立つものという捉え方ではなく、流動的で「動的平衡」にあるという視点もあることを、若くして亡くなったシェーンハイマーの実験を、チーズとネズミのアニメーションにしてわかりやすく話されました。
また、ご自身の研究内容についても触れて、膵臓で重要な働きをしているのでは?、と思って作ったとある遺伝子のノックアウトマウスが、まったく異常がなくてがっかりして、でも消化管のM細胞という特別な細胞で働いており、免疫細胞の活性化に重要であることがわかり、2009年に上記の論文発表にこぎつけたとのこと。ここまでなんと20年だそうです。研究というのは、何かを突き詰めて究めていくことですね。
ご講演自体は以前、いちど、日立グループの創業百周年の記念イベントでも聴いたことがあったのですが、今回仕入れた新しい話は、どのようにしてフェルメールに辿り着いたのか、ということがひとつ。
科学者はたいてい「昆虫少年」か「ラジコン少年」に分類されるのですが(女子はどうなる?ww)、福岡さんは前者。小さい頃に買ってもらった顕微鏡で蝶の鱗粉を見て感動したエピソードなどを話されましたが、その「顕微鏡って、いつ誰が作ったのだろう?」という興味から、レーウェンフックに辿り着き、さらに、そのレーウェンフックと同い年で同じデルフトにいたことがある画家というのがフェルメールだと知った、ということでした。
フェルメールは寡作なので、37点の「全点制覇」というのは、フェルメールファン(もしくはフェルメールオタク)の夢でもあり、福岡さんは10年かけてニアリー・コンプリートなのですが(どうしても現在見ることができないものが2点あり)、それを「一度に全部、見たい!」という夢を叶えたのが
「re-create」の フェルメール展です。私も銀座で見ました。
現在、サバティカルでニューヨーク在住とのことで、その間になんとニューヨークでも同じ企画を行ったそうです。そうやって「オタク度」が世界的に知れ渡ると、ついには「真珠の首飾りの少女」を収蔵するマウリッツハイス美術館から電話がかかってきて、「ヴィデオを制作するので出演してほしい」というオファーが! どんな素敵な作品に仕上がったのかは、どうぞこちらのYouTubeを視聴あれ♬
現在、個人蔵のフェルメールがどうも日本にあるらしく「誰が所蔵されているのか、今、必死に調べているんですよね……」というのは、研究と通じるオタクな気持ちですね。
今日はご著書にサインを頂いてお名刺交換させて頂き、記念撮影。いつかゆっくりフェルメール談義をしたいものです……。
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