今年は東北大学病院および医学部の百周年です。日曜日に病院主催の市民公開講座が開催されました。
今回の企画担当は神経内科の青木正志先生で、神経内科の長谷川隆文先生、中島一郎先生、青木先生がそれぞれ基調講演をされました。また、基調講演は慶応大学医学部長になられた岡野栄之先生がiPS細胞を用いた再生医療の現状について包括的に、ときに高校時代のエピソードなども交えて話されました。その後、ご講演された先生方に登壇して頂き、不肖ながらコーディネータとしてパネルディスカッションを行いました。
サプライズだったのは、青木先生神経難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)のお話のときに、日本ALS協会の宮城県支部会長の方が、介護の方とともに車椅子で登壇されたことでした。メッセージは奥様が代読され、「自分の意識の中では、自分は自由に歩いたり走ったりしています。早く治療法を確立して下さい。ノーベル賞を取られたらお祝いに馳せ参じます」との希望を述べられました。
ALSのような希少疾患は、そのお薬の開発などをなかなか製薬会社さんが行ってくれません。患者さんの数が少なければ、開発費の元が取れないという算盤勘定になります。そういう場合には、なおのこと、大学への期待が高まります。
青木先生は1993年にALSの原因の遺伝子解明に関わられ、それからALSのモデルとなるトランスジェニック(Tg)ラットを作製され、そのTgラットを用いて幹細胞成長因子(HGF)が症状の改善や生存率向上に効果があることを示されました。HGF自体も、大阪大学の中村一義先生が発見された、オールジャパン発の研究開発です。マーモセットの脊髄損傷モデルでもHGFの有効性・安全性を確認した後、現在、臨床研究を勧められています。治験は、東北大学神経内科、慶応大学医学部、そしてベンチャー企業であるクリングルファーマ社等との共同研究です。
青木先生たちがHGFの臨床試験を開始されたのは、ちょうど震災から4ヶ月頃のことでした。岡野先生が同じ年の11月に慶應大学と東北大学の連携にについて、慶應大学の紀要に総説を書かれています。
Short titleも素敵です。
Tohoku–Keio Collaboration before and after March 11, 2011
研究を進めるのは、人と人の繋がりも大きいと改めて思った次第です。
講演会終了後には、東北大学医学部3年生を含め、何人もの若い方が岡野先生を囲んで質問をしていました。未来のフィジシャン・サイエンティストになって欲しいものです。