
荒木飛呂彦さんは天才だ。それは、2013年の東北大学ホームカミングデーの基調講演に登壇して頂いたときに、十分わかったのだけど、それに加えて努力家だったのだと本書
『荒木飛呂彦の漫画術』を読み終わって痛感した。
漫画を成り立たせている要素として「キャラクター、ストーリー、世界観、テーマ」の4つがあり、それらを増補し統括するのが「絵」と「セリフ」だという。
そのキャラクターを作るのに、詳細な「身上調査書」をまず作成して、登場人物の性別、年齢、生年月日、血液型、出身地、慎重、体重、髪の色、瞳の色、学歴、将来の夢、恐怖、性格、特技、癖……と、本当に細かくいろいろな情報を予め決めておくことが大事。その細かさが半端ない。そうでないと、描いている間に矛盾が生じてしまったりするからだという。
本書は30年以上漫画を描いてきた荒木さんが、「王道漫画」を描くための「黄金の道」を記したものであり、いわば「企業秘密」ではあるのだけど、漫画の世界をこよなく愛しているからこそ、後に続く方が本書を「地図」として、自分を超えていって欲しいと願うのだろう。
頂点を目指すには、「単に一過性でヒットすればいい」と思っていては駄目だと釘をさしてもいる。これはおそらく、どんな分野であれ本当のことだと思う。努力し続けることができること自体も天才なのかもしれない。
荒木さんの漫画の描き方は、デビューの頃と比べて徐々に変わってきた。それは、ご自身の絵の描き方自体も、プロとしてトレーニングされ、洗練されていったからであるとともに、時代の流れをきちんと取り込んできたからでもある。「変わる」ことによってこそ、常に「変わらず」新しい感覚を備えた漫画になるということも、他の分野でもその通り。
本書における「漫画」を「論文」に置き換えて、いろいろ考えてみることにする。