昨日、MITの利根川先生のラボでポスドクを4年半ほどされている北村貴司さんのセミナーを開催しました。
北村さんは海馬と神経結合している嗅内野と呼ばれる脳の領域に、島細胞(island cells)と海細胞(ocean cells)という構造を見出し、時間的に数秒程度離れ2つの出来事を結びつけて記憶することを負に調節していることを発見し、2014年にScience誌に発表されました。アイランド細胞とオーシャン細胞は、昨年のノーベル賞受賞者の4名のうちのお二人、モーザー夫妻が嗅内野で見出したグリッド細胞としても働いているとのこと。画像は理研のプレス発表より拝借(
日本語版、
英語版)。
今回は日本神経科学大会でのシンポジウム発表のために一時帰国され、各地でセミナーをして回られ、この日が最後のセミナー。元々のお人柄もありますが、ジョークも折り込みながら、クォリティーの高いデータを披露して下さいました。井ノ口馨先生の元でも2009年のCell誌の筆頭著者であり、利根川研での4年の間に4本の論文発表に関わり、きわめて生産性が高い。ちょうど、
日本神経科学学会奨励賞も受賞され、若手のホープとして期待されています。
個人的には、利根川先生のエピソードが面白かったです。50名ほどのメンバーがいるラボなので、ラボ内野球大会を毎年行っていて、利根川先生のチームが負けそうになると、「チェンジ!」と言われて4番のエースを引き抜いて勝利。そこまで勝負に拘るからこそ、1987年に日本人として始めてノーベル生理学・医学賞を受賞されるという栄誉に繋がったのでしょう。その後、なぜ神経科学に転じたのか、是非、今度詳しく伺いたいと思います。
9月の知のフォーラムの国際シンポジウムに利根川先生をお呼びしていますが、その前日、9月27日に読売新聞社との共催により市民公開講演会を開催します。現在、参加者受付中です。とくに、高校生・大学生・大学院生は登壇して直接、利根川先生に質問する方を募集しています。詳細は以下を御覧ください。
(現在、読売新聞のサイトに不具合があるようです……)