シカゴ便の機上で観た映画など:プロフェッショナル仕事の流儀「スーパーさいち」の回とJ.K.Rolling関係

成田からシカゴへのJL010機上で最初の食事をしながら『ジュラシック・ワールド』を観るか迷った挙句に、『MAX』という日本未公開の映画を選んだ。アフガン戦争でPTSDになった軍用犬のマックスが主人公。退役軍人の父親と、それに憧れて軍に志願した兄の死、ヒーローというタイプではない弟の葛藤、いろいろ考えることも多いが、最後は正義が勝つというストーリーで見終わった感じは良かった。マックス、とても賢いし。

到着が現地の朝なので、とにかく寝なければと思って数時間休んで、その後、スカイWiFiに繋いでメール処理などして、そういえば、ビデオに『プロフェッショナル』があったと思ってよく見たら、なんと仙台市郊外の秋保という温泉町にある「スーパーさいち」の経営者が取り上げられていた。(画像は飛行機のモニタの画面をiPhoneで撮影)

シカゴ便の機上で観た映画など:プロフェッショナル仕事の流儀「スーパーさいち」の回とJ.K.Rolling関係_d0028322_09022136.jpg
佐藤啓二氏とその妻の澄子さんが経営する小さなスーパーは、「手作りのおはぎ」が有名で、しばらく前に、初めて頂いたばかりだった。「すごい行列なんですよ!」と聞いていたが、地元の方々にはお惣菜も有名で、毎日、開店15分前から外に客が並ぶという。澄子さんが陣頭指揮を取るお惣菜は、夜中の1時から作り始め、賞味期限はその日のみ。一切の保存料など使わず、あくまで「家庭の味」にこだわるのが澄子さんの流儀。番組では、おはぎの餡を糖度計で測って40%という数字が出ていたが、たしかに、さらっとした甘みで美味しかった。

啓二氏は毎朝、新聞をチェックして、その日の天気や気温を「えんま帳」に記入して、その日に店頭に並べる商品構成を考えるという。いわば、アナログなビッグデータ解析を自分の頭の中で行っておられるようだ。少しでも生鮮食料品やお惣菜などの売れ残りが無いようにすることに徹底しているのは、食べ物を大切にするという意味でも大事だと思う。おはぎの場合も、店での売れ行きをモニタでチェックしながら、裏の厨房で「3個入りを増やして下さい」などと細かい調整が為されているらしい。

「お客の喜ぶ顔を想像しながら作る」というのが澄子さんのプロフェッショナル魂。素敵ですね。

最後に観たのは、BloombergというTV局が作成したGame Changersというリーダーの人となりを伝える番組のJ.K. Rollingの回。


子どもから大人まで知らない人はいない『ハリー・ポッター』シリーズの作者は、かつて職のないシングルマザーだった、ということは知っていたのだが、最初に書いた物語は6歳のときで、お母さんに「これ、出版して!」と言ったとのこと。ハリー・ポッターはロンドンに向かう列車の中で着想を得たこと。それ以降、仕事が疎かになって職を失い、ついには生活保護まで受けていたこと。そのハングリーな状態で『ハリー・ポッターと賢者の石』を書き上げ、出版社に売り込みに行ったのだけど、どこも扱ってくれなかったこと……などなど、知らないエピソードが満載。多発性硬化症を患っていた母親は、ローリングの執筆半ばで他界し、ようやく英国のブルームズベリー社からの出版が決まったときに、本を見ることは無かったのは気の毒だった。

最初、出版社は「子どもの本として、厚さは倍だし、難しい言葉が多いし、扱っているのは古風な魔術だし、こんな本が売れる訳がない」と却下したのだが、ブルームズベリー社のトップの方が娘だったか孫娘だったかに読ませてみると、「続きが読みたいわ!」という反応だったことが決め手だったようだ。子どもはむしろ自分の気持ちに忠実で、面白いものは面白いと判断できるのだから、大人が思い込みで決めてはいけない。

逆に、発売前に書店に行列が並ぶほどの大ブームとなってくると、宗教団体からクレームが付いて焚書まで起きたという。「魔術を取り上げた本が良くないというのであれば、『オズの魔法使い』だって禁書になるでしょう」とJ.K.ローリングは反論したという。

一番面白かったエピソードはペンネームの決定のところ。ブルームズベリー社の担当者は「作者の性別がわからないペンネームにした方が良い。女の子は作者の性別にはこだわないが、男の子は女性作家の本は読みたがらないから」ということで、「J.K. Rolling」というペンネームが決定したらしい。Wikipediaにも載っている話ではあったが、子どもの男女差として面白いと思った。

映画の制作においてもローリングは「英国人の俳優でなければ」とキャスティングからこだわり、独自のハリー・ポッターの世界にブレが無いようにしたことも、結果的には大ヒットにつながったのだろう。テーマパーク「Wizarding World of Harry Potter」まで作られ、もはやとどまるところを知らない社会現象となったハリー・ポッターの作者は、ハーバード大学の卒業式に呼ばれたときのスピーチで「挫折は人を強くする」というメッセージを送っていた。

J.K. Rollingのスピーチのテキストと動画リンク先(Harvard Gazette):

Text of J.K. Rowling’s speech


by osumi1128 | 2015-10-31 22:50 | 旅の思い出

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


by osumi1128
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31