哺乳類は「乳房類」:小川眞里子先生のご講演など@第12回東北大学男女共同参画シンポジウム

BMB2015@神戸から戻ったら、仙台は雨まじりの寒い日でした。掲載の時期が前後しますが、11月21日に第12回東北大学男女共同参画シンポジウムが開催され、種々、興味深いお話を伺ったので、いくつか残しておきます。
哺乳類は「乳房類」:小川眞里子先生のご講演など@第12回東北大学男女共同参画シンポジウム_d0028322_10064775.png

総長の開会ご挨拶ならびに、文部科学省研究振興局長の小松弥生様のご来賓お祝辞の後、昨年から始まった「澤柳政太郎記念東北大学男女共同参画賞」の授賞式がありました。今年は、自然科学系分野で長年、男女共同参画や女性研究者育成支援にご尽力されてこられた大坪久子先生@日本大学薬学部にA賞が、若手向けのB賞はグループ受賞で「新大Wits」が受賞となり、短い講演が為されました。
哺乳類は「乳房類」:小川眞里子先生のご講演など@第12回東北大学男女共同参画シンポジウム_d0028322_10170215.jpg
大坪先生はご留学先のストーニーブルック時代に米国で男女共同参画運動が推進されており、帰国されて日本の現状を変えなければと思って、日本分子生物学会に男女共同参画ワーキンググループを立ち上げられ、その後、男女共同参画委員会になりました。種々の学会が連合して情報交換などを行う男女共同参画学協会連絡会でも活動され、大規模アンケートに基づいた種々の提言などをまとめられました。それらの成果の一つは、日本学術振興会のRPD制度です。出産育児などで一時、研究活動を中断された方(男女問わず)が「リスタート」するための支援としてのPD枠を設けたもので、これは順調に運用されています。東大を退官された後も、女性研究者の「Visibility調査」などを続けてこられました。私にとっては、男女共同参画について無知な頃から種々教えて頂いた先輩の女性研究者のお一人です。今回の東北大学からの賞が、さらに大坪先生のご活動に活かされてほしいと願っています。
哺乳類は「乳房類」:小川眞里子先生のご講演など@第12回東北大学男女共同参画シンポジウム_d0028322_10171165.jpg
「新大Wits」の活動は、東北大学サイエンス・エンジェルをお手本としたものということですが、女子大学院生だけでなく、男子も参画。出前授業やサイエンス・セミナーなどを開催されています。今回は代表の中野享先生が活動の様子を披露されました。
哺乳類は「乳房類」:小川眞里子先生のご講演など@第12回東北大学男女共同参画シンポジウム_d0028322_10171837.jpg
さて、基調講演のお一人は、三重大学名誉教授の小川眞里子先生。東大教養のご出身でもあり、ご著書も多数あるのでご存知の方も多かったのではと思いますが、「近代科学の歴史とジェンダー」というタイトルでご講演頂きました。イントロで「リカちゃん」のプロフィールご紹介。「数学は苦手」というキャラクター設定は、多くの女子に(そしてその親などにも)「女子は数学は苦手」という意識を刷り込んでしまうのでは、というつかみから始まり、話はヴェサリウスの時代へ。男性の骨格の隣に置かれたのは、人間以外の動物で、当時もっとも知性があると思われていた「馬」。さて、女性の脇に置かれた動物は何でしょう???

答えは「駝鳥」!
哺乳類は「乳房類」:小川眞里子先生のご講演など@第12回東北大学男女共同参画シンポジウム_d0028322_10245789.jpg
なぜ、駝鳥なのかというと、骨盤が大きい、大きな卵をたくさん産む、頭は小さい、首が細くて長い、という点が「女性らしさ」を表すということだったのです。(ここでも小川先生は駝鳥の卵の模型を持参され、それを会場の聴衆に渡すなどの、科学コミュニケーションとして素晴らしいスキルを発揮されていました♬)
哺乳類は「乳房類」:小川眞里子先生のご講演など@第12回東北大学男女共同参画シンポジウム_d0028322_10252856.jpg
その次の話題が、リンネにより四足動物に「Mammalia ママリア」という分類名がどのような経緯や背景で付けられたのか、ということ。日本語では「哺乳類」なのでわかりにくいですが、「mamma」というのは「乳房」を意味します。つまり我々は「乳房類」なのです!

この背景には、当時は「乳母」の制度が普通で、地位の高い方の家庭が、子どもを地位の低い「乳母」に育てされる、乳母をする女性も、自分の子どもはさらに貧しい母親の乳母に預ける、ということが一般的であったとのこと。そのために乳幼児死亡率も非常に高かったのを改善するには、「子どもは母の手で、母乳で育てることが重要」という意識の醸成を図る必要があり、そのキャンペーンに一役買ったのが、科学者のリンネだったという訳です。
哺乳類は「乳房類」:小川眞里子先生のご講演など@第12回東北大学男女共同参画シンポジウム_d0028322_10273518.jpg
つまり「母性愛」とは、自然や本能としてに備わったものではなく、近代が生み出した歴史的な概念、というのが小川先生の主張です。詳しいお話を知りたい方は、ぜひ、こちらの小川先生のご高著『甦るダーウィンー進化論という物語』や、翻訳された本『女性を弄ぶ博物学ーリンネはなぜ乳房にこだわったのか?』を御覧ください。

もう一人の特別講演は、明治学院大学の柘植あずみ先生。「男女共同参画は科学と高等教育をいかに変革できるか?」というタイトルで、生殖医療について男女共同参画の観点からの問題点をご指摘になりました。ご自分のHPでも発信されていますので、こちらを御覧ください
哺乳類は「乳房類」:小川眞里子先生のご講演など@第12回東北大学男女共同参画シンポジウム_d0028322_10422834.jpg
さて、気づかれた方がおられれば、すばらしい目の鋭さと思いますが、上のポスターに掲げた試験管の中の二重らせんデザインは、実は「逆向き」です! 実際には、こういう逆向きの二重らせんも世界には存在するのですが、多くは反対向き(時計回り)です。つまり、現状で、まだまだマイノリティーである女性を象徴していたのでした!





by osumi1128 | 2015-12-05 10:46 | 東北大学

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


by osumi1128
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30