本日のGoogleトップページのミニゲームに気づいた方はどのくらいいるだろう? 白衣の男性はウィルバー・スコヴィルといい、1912年に唐辛子の辛さの測定を行っった研究者で、唐辛子にどのくらい辛味成分のカプサイシンが含まれるかという基準値は彼の名前を冠して「スコヴィル値」と呼ばれている。さて、カプサイシンの効能はいろいろあるが、我が東北大学で面白い研究成果が報告されていることを思い出した。
2010年に公表された記事等が残っているが、要するに、カプサイシンが老人性の「誤飲」の改善に役立つという内容である。(東北大学加齢医学研究所老年医学分野HPより)食事の際、むせこむことはありませんか?また、食後に痰がたくさん出ることはありませんか?誤嚥のおおもとは脳の機能低下にあります。気管の方へものが入ると咳がゴホンゴホンと出ますが、これは脳の働きで誤嚥したものを掻き出そうとしているのです。咳は不快なものですが、もしこのゴホン ゴホンが出なくなってしまったらどうなるでしょうか?これが、誤嚥性肺炎なのです。誤嚥性肺炎を繰り返すと食事ができないため、当然のことながら低栄養となり痩せてきます。摂食・嚥下・栄養外来では、嚥下反射の程度、・咳反射の程度を検査し、合わせて誤嚥性肺炎を引き起こしている脳の病気と栄養状態を調べます。塩酸アマンタジンやアンジオテンシン変換酵素阻害薬等による誤嚥性肺炎予防法のみならず、カプサイシントローチや黒胡椒によるアロマセラピー(嗅覚を介した薬物送達術)を開発しています(平成18年7月24日付け、朝日新聞掲載)。このようなアプローチで胃瘻造設を回避出来た例があります。
上記のように、山田養蜂場との共同研究の成果を含むようであるが、平成19年に東北老年期痴呆研究会で報告された、より詳しい内容は以下のPDFで読むことができる。
老人の誤飲は結果として肺炎を招くことが多い。誤飲性肺炎は高齢者の死因の上位に位置することはよく知られている。上記の報告におけるTRP受容体というのは細胞の表面でカプサイシンをキャッチするタンパク質であるが、喉の奥で反射に関わる神経細胞をカプサイシンで刺激しておくと活性が高まって、食道と気管の弁の反射の失敗を防ぐことができる、ということなのだろうか?
この発想を試す根拠として、上記、東北大学老年病態学講師(当時)の海老原覚先生の報告書によれば、高齢者の嚥下反射(飲み込む反射)について、飲み込んでもらう蒸留水の温度を種々変えてみたところ、体温に近い30-40℃のときに潜時が長く、低いか、もしくは高い温度では潜時が短いという調査結果を得た。要するに、人肌近い水の方が誤飲が起こりやすいことになる。
そこで、海老原先生は温度受容体を刺激することを思い至ったようだ。報告書の中では、爽やかな、もしくは冷たい感覚を与えるメンソール入のゼリーや、熱い、もしくは辛い感覚を与えるカプサイシン含有トローチなどの効果を調べられたのだ。
ともあれ、もしこれが正しいとすれば、食事の前に、まずはキムチを前菜に、というのが、高齢者の誤飲予防に繋がるのだろうか??? 残念ながら、これ以上は筆者の専門とするところではないのでわからない。ちょうどGoogleさんのトップページがカプサイシン関連だったので、で東北大学発の成果について思い出した次第。(キムチの画像は某焼肉屋さん@仙台にて大隅撮影♬)