ベネルクス訪問(その2):マーストリヒト

マーストリヒトは、オランダの南端に飛び出した部分の都市。EUの元になった「マーストリヒト条約」が結ばれたところですが、最近は観光客が増えているとのこと(後述します)。Maastrichtという地名の由来はローマ時代に遡り、マース川という市内を流れる大きな川にかかる橋、という意味とのこと。紀元2世紀の石造りの橋は、写真撮影スポットの一つです。ブリュッセルからはインターシティー(IC)の列車をリエージュ・ギルマンというところで乗り換えて、正味一時間半くらい。こちらの方は「車なら一時間」と言っています。


マーストリヒト大学は、歴史は決して古くは無いのですが、最近、ランキング急上昇の大学です。すでに、教員も学生も60%が外国からという国際化率も、世界ランキング上昇に繋がっているものと思います。こちらのPsychiatry & Psychologyという部局が修士レベルのneuroscienceのプログラムに関して日本のいくつかの大学と連携しており、東北大学もその1つとして参画しています。これまで、4名の学生さんを受入れ、1名の学生を(うちのラボからのK君)派遣したところです。


今回の訪問では、今後の相談として連携を博士課程まで広げることについて、担当のHarry Steinbusch先生と打合せを行うというのがメインの用務。また、セミナーをした後、次のラウンドとして今年の秋から日本に来る予定の学生さんたちとランチを取りながら、日本の様子などをお話しました。


マーストリヒトの学生さんたちは、海外留学にとても積極的なのですが、「どうして日本からはこちらに来ないのだろうか?」という話題になりました。やはり英語圏に行く方が良いのでは、という思い込みがベースにあるのかもしれませんし、そもそも留学に積極的ではないのは、K君に訊いてみると「日本の居心地が良いからじゃないですか?」とのこと。「じゃぁ、なぜ貴方は留学したの?」と訊いてみると、「僕は海外で生活したいなぁと思っていて、来てみたら思いの外すごく居心地が良かったので、さらにこちらにいたいですね」というタイプでした。


「なんで居心地がいいの?」と突っ込むと、「こちらでは人のことを気にしないのが楽なのかも」とのこと。「あぁ、うちの初代の大学院生も、大学院修了後にすぐにNIHに留学して、そのままグリーンカードも取って、今はFDAの職員になってるのだけど、アメリカでは汚い格好をしていても平気ですから、って笑っていたかな」「日本だと、皆、人と比べたがるでしょう?」「なるほど、そういうプレッシャーが無いってことね」


確かに、ベネルクスに留学しても英語のネイティブな発音に曝される、という意味では、英米には劣ります。ところが、オランダやベルギーは何カ国語も話せる方が多く、例えばSteinbusch先生も5カ国語OKとのこと。英語が公用語ではないにも関わらず、普通のサービスに従事する方々は、皆、普通の会話レベルは問題無いので、「オランダに留学するのには、オランダ語が話せないと困るのでは?」という懸念は、まったく必要ありません。むしろ、多国籍な環境で英語での議論をする上で、お互いにネイティブではなく、同じ土俵で話せるという意味では、日本人として英語が話せないという劣等感を感じないで済むというメリットもあると思います。


東北大学では2018年から、1年の留学を含む「NeuroGlobal国際大学院プログラム」を開始し、留学の間、学振程度の経済支援をする予定ですので、興味のある方はメールで連絡して下さい。


*****

さて、マーストリヒト大学での用務を終えて、Steinbusch先生、もうお一人のファカルティの方(お名前が覚えられず……orz)、K君とともに夕食に行くまでの間、Steinbusch先生のガイド付きでマーストリヒトの目抜き通りなどを散策しました。冒頭のマーストリヒトの名前の由来などもそうですが、地元出身のSteinbusch先生の解説で物知りになりました。例えば、とある教会は、ナポレオン時代にマーストリヒトがフランスに占領された際、元あった建物よりも高い塔を建てるように、という命のもとに新たな尖塔が造られ、フランスを象徴する赤い色に塗られたとのこと。マーストリヒトは古い都市ですがアート関係の活動も盛んで、もうすぐ(調べてみると311日からでした!)「アートとアンティークの祭典TEFAFマーストリヒト」という催しが始まるそうです。


一番訪れたかったのが、「世界でもっとも美しい本屋」として認められたというブックショップ。こちらは古い教会を改造して本屋さんになっているのです。「どうして、教会が本屋になったのですか?」とSteinbusch先生に伺ってみると、「マーストリヒトは教会が多いのですが、最近は教会に行く人も減り、聖職者も減り、教会として維持できなくなってきたからですね」。なるほど!

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高さのある教会が活かされた作りになっていて、ステンドグラスからの光や、白熱灯の使い方が秀逸なためか、どこをiPhoneで撮影しても様になる、という印象でした。絵本のコーナーにはミッフィーさんが。そういえば、オランダが発祥でしたね。

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日本人作家のものが無いかと思ってSteinbusch先生から店員さんに「<ハルキムラカミ>という日本の作家の本は無いか」と伺って頂くと、「5種ありますが、どれですか?」と返答され、「じゃぁ、一番、新しいので」とSteinbusch先生が即答して、『女のいない男たち』が「平積み!」になっているコーナーに連れて行かれました。

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今度来ることがあれば、こちらのカフェでくつろぎたいと思いました。

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マーストリヒトは欧州各地からのアクセスも悪くないので、最近は多数の観光客や買い物客が訪れるそうです。まだ中国の方は多くない模様。マース川から西側に広がる街並みは、細い路地、大きな広場など、いかにも歴史のあるヨーロッパの都市、という雰囲気もさることながら、上記のような本屋さんの他にも、欧州のブランドショップ、おしゃれなカフェ、ミシュランの星付きのレストランなどもあるので、そのあたりを求めて集まるのでしょうね。

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by osumi1128 | 2016-03-06 01:05 | 旅の思い出 | Comments(0)

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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