能舞台での発表

水曜日の午後に男女共同参画学協会連絡会の会議を行ってから奈良に移動。
木曜日、金曜日に国際シンポジウムFrontiers in Developmental Biologyに参加した。

CDBから奈良先端大にまた戻った高橋淑子さんのオーガナイズによるシンポジウムで、元々は「体節の発生」の特定領域研究終了記念のもの。
内容も充実していたが、なんといっても場所が素晴らしい。
奈良公演そばの奈良県新公会堂というところの能楽ホールが会場であり、演者は靴を脱いで能舞台に上がって発表するというのは誰にとっても初めての経験。
奈良にはいくつかの世界遺産を含む文化財がたくさんあるが、京都ほど混んでいないのがよい。
小高い丘陵が遠くに見える景色は、生まれ育った鎌倉・逗子の風景にも似ているところがあって眼に馴染む。
ちょうど紅葉が見事な季節だったことも、とくに外国人ゲストスピーカーには何よりのおもてなし。

20名のトークと30ほどのポスターがあったが、今回一番面白かったのはボルボックスのinvaginationのメカニズムについて。
ボルボックスは体細胞が約2000個、生殖細胞が16個から成るのだが、途中、裏表がひっくり返しになって、最初外側に突出している生殖細胞がちゃんと内側に入るようになる、というのは知らなかった。
いくつになっても新鮮な驚きがあるのは楽しいことだ。

高橋研のメンバー総出の手作りのシンポジウムで、若い学生さんたちが頑張って裏方を務めてくれていたのがほほえましい。
また、奈良先端大からは多数の学生さんが参加していて、(半ば強制的だったのかもしれないけど)一生懸命英語で質問していたことも良い雰囲気だった。
オトナたちは、初日こそかなり質問していたが、だんだん疲れてきて(苦笑)、その分、場に慣れてきた若い方たちが後半にしっかり質問していたことにより、David Wilkinsonをして「質問がとても多かったことが印象的だった」と言わしめたと思う(2日目夜の打ち上げ会の最後のスピーチにて)。
スケジュールがゆっくりしていて、質問を打ち切らないで行ったのは、確かに最近では珍しいことかもしれない。

本当はうちの学生さんにもポスターを出して参加してもらったら非常によかったのだが、先日COEの国際シンポジウムがあり、来週は博多で分子生物学会ということもあって、今回は連れてこなかった。
まあ、昔に比べたら本当に国内の国際シンポジウムが多くなったし、若い方たちが参加できる機会が増えたのは、この分野に限らないだろうが、日本の研究の底上げにつながっていると思う。
Andrew Lumsdenなどは頻繁に来日しているが、今回初めて日本に来た若手の外国人研究者は、日本が「意外に進んでいる」という印象を持ったようだ。
大変結構なことである。


ところで、外国人に日本の文化について説明するときに「2つのキーワード」を教えることにしている。
まず1つは「アシンメトリー(非対称性)」。
日本では美術工芸品にせよ、建築物にせよ、庭園にせよ、アシンメトリーであることが多い。
「能舞台」もそうだが、歌舞伎の舞台も向かって左手に「花道」があり、決して左右対称ではない。
ほとんど対称に見える鳥居でさえ、東側の方が若干太いのだそうな。
2つ目は「時間の推移」。
これは主に絵画の技法だが、二次元の世界に「時間の流れ」を取り込んでいることがよくある。
絵巻物などは典型的だが、そうでなくても、「写実性」より「物語性」が重視されるのだろう。
by osumi1128 | 2005-12-03 21:34

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


by osumi1128
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30