愛媛からの帰路、土曜日は別シンポジウムで講演とパネル・ディスカッションに参加してきました。主催のお茶の水女子大学では、平成27年度より奈良女子大学と連携し、「
女性教育開発共同機構(CORE of STEM: Collaborative Organization for Research in Women's Education of Science, Technology, Engineering, and Mathematics」という仕組みを作り、とくに女子生徒・学生の理系教育推進んのための取組みを行っています。お茶の水女子大学では、保護者や子ども向けに「リケジョ・未来シンポジウム」という、さまざまなリケジョ(理系のキャリアを持つ女性)のロールモデルを提示するイベントも開催されています。今回、学長の室伏きみ子先生からお声がけ頂きましたが、自分の講演の冒頭では、お茶の水女子大学と東北大学の繋がりとして、日本で最初の女子学生3名のうちの一人、黒田チカ先生は、
東京女子高等師範学校(お茶女の前身)の卒業生であったことをお話しました。
拙翻訳本『なぜ理系に進む女性は少ないのか?』からの引用含めて、種々のエピソードを盛り込みつつ、全体のメッセージとしては「大人の無意識のジェンダーバイアスを変えることが重要」ということをお伝えしたつもりです。
黒田チカ含む日本で最初のリケジョについては、下記をご参照下さい♬
画像は、開会のご挨拶をされる室伏先生と本の表紙(西村書店さんのHPより)
今回のシンポジウムでは、教育学の専門家として
愛媛大学の隅田学先生と、国立教育政策研究所の銀島文先生からのお話を伺うことができ、たいへん勉強になりました。隅田先生とは、JSTの理系教育に関する委員会で以前に御一緒したことがありましたが、今回は、女子生徒が若いうちに高い理数系能力を発揮すること(逆に言うと、それが活かされていないことになります……)などのデータを拝見できたのがありがたかったです。
銀島先生は、2012年のPISAのデータをご紹介頂き、15歳児における理数系のスコアの男女差が前回よりも広がったことを知りました。また、最新の国別のデータを見ると、上海やシンガポールの教育レベルが高まっていることがよくわかりますね……。
詳しくはこちら
残念ながら、講演に使われた男女別国別の資料はこちらには含まれていないようなので、後で銀島先生から取り寄せたいと思います。
パネル・ディスカッション、その後の懇親会でも種々のご意見を伺うことができ参考になりました。高専の先生が「大学院進学まで希望する女子生徒に、<将来、大丈夫でしょうか?>と相談されたときに、どのように答えるべきでしょうか?」という質問をされたので、「一般論で答えるよりも、先生ご自身がご存知の、理系のキャリアパスの女性を挙げて、<こんな方もいますよ。だから貴女もがんばってね>という伝え方の方がインパクトがあると思います」という意見を述べておきました。私よりも年上のようにお見受けしましたので、その周囲にそういうロールモデルとなるような女性がおられないということが問題なのだろうなと思いつつ……。でも、もし真剣にそういう女子生徒を伸ばしたいと思うのであれば、「◯◯大学に、こういう女性の教授がいるから、相談に行ってみたら?」というようなアドバイスをして頂けたらと思います。遠くても、今ならSkypeだってありますし。多様でリアルなロールモデルの存在を知ることが大切だと思います。拙ブログにも「
東北大学縁の女性研究者」というシリーズで取り挙げています。
隅田先生の才能教育のことなども含め、いずれにせよ、個々の才能をうまく伸ばせる社会であってほしいと思いました。コーディネートされた佐藤明子先生はじめ、関係各位のご尽力に感謝いたします。(画像は閉会と懇親会開会のご挨拶をされた小川温子先生)