博士の愛した数式
2005年 12月 13日
青葉通りと定禅寺通り、それから勾当台公園の樹々がライトアップされる。
毎年、青年商工会議所が中心となって募金なども行い、経済的に苦しいと言われ続けていたのだが、今年はゆとりがあるらしい。
青色発光ダイオードで飾られたツリーなどもあって、夜の街中がいつもより混んでいる。
寒い地方ではより一層、街の灯りが心温まる。
月曜日東京出張の帰りの新幹線で、『博士の愛した数式』(小川洋子著、新潮文庫)を読み始め、夜更かしして読み終わった。
こんなに一気に本を読んだのは何ヶ月ぶりだろう。
お正月映画にもなるとのことで、「文庫化されたから、是非読んで!」と数学科の友人に言われ、東京駅のBook Gardenで購入。
登場人物といえば、新しい記憶を持つことのできない数学者の「博士」、離れに住まう博士の家政婦として雇われる「私」と、博士に√(ルート)という名前を付けてもらった「私」の息子、母屋に住む博士の義理の妹の未亡人くらいだ。
その少ない登場人物をつなぐのはさまざまな美しい数式と、それとおよそ不釣り合いに見える元タイガースの「江夏」である。
ベストセラーなので私が書評をコメントする必要はないのだが、小川さんの筆致はどの人物に対しても優しく、私の涙腺は何度もゆるんだ。
その意味では新幹線で読むには不適当であった。
さらに「数字」や「数式」に対しても愛しさと畏怖が溢れている。
「素数」は知っていたが、「完全数」や「三角数」、はてまた「友愛数」などは知らなかった。
さまざまな数字に「意味」や「性格」が隠されている。
数学がこんなにロマンチックだとは思わなかったなあ……。
数学科の友人が勧めるだけのことはある。
中学くらいのときにこの本を読んだら、数学に対する気持ちがずいぶんと違ったことだろう。