前作『ワンダー』からほぼ2年で、続編として
『もうひとつのワンダー』が上梓されました。今回も少しだけ専門用語の確認に携わらせて頂きました。
作者のR.J.パラシオが「はじめに―作者のことば」で述べているように、本書は続編といっても、『ワンダー』の主人公のオーガスト(オギー)のその後の成長について書かれたものではありません。『ワンダー』では脇役であった登場人物の行動の背景や心の内面について、3つのストーリーにまとめられています。
オーガストはニューヨークに住む「ごく普通の10歳の男の子(ただし顔を除く)」という設定で、ビーチャー学園という私立の学校に通っています。今回、スポットライトが当たったのは、オギーをいじめていたジュリアン、幼馴染のクリストファー(クリス)、そしてジュリアンと同じく、トゥシュマン先生から「オーガストと仲良くしてあげてほしい」と依頼された女子生徒のシャーロットの3人。生まれつき顔に形成不全のあるオギーとの関係性において、それぞれにそれぞれの事情があること、自己との葛藤、親子の交流やわだかまりなどが、生き生きとした会話として語られます。すんなり読めるのは訳者の選ぶ言葉が良いからですね。
そのエピソードの中には、前作『ワンダー』には出てこない、新たな登場人物も出てくるのですが、個人的には、パリにいるジュリアンのおばあさんと、シャーロットたちにダンスの指導をするアタナビ先生が気に入りました。子どもたちが友人関係で悩む状況からは、もうだいぶ年を取ってしまったので、感情移入しやすかったのが、これらの人物だからかもしれません。もし同じくらいの年頃のお子さんを持っている方なら、子どもたちとその両親とのやりとりから、多くのことを感じ取れると思います。なので、本書は素晴らしい児童書ですが、必ずしも子どもだけの本ではないといえるでしょう。
「けれどジュリアン、人生のすばらしさはね、ときにまちがいを正せるってことなんだ。あやまちから学ぶ。そしてよりよい自分になるんだ。」ジュリアンのおばあさんの言葉です。どんな「ワンダー」があったのかは、中身を読んでのお楽しみ!
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