指定国立大学となった東北大学の未来

東北大学は次年度から総長が変わります。第22代総長は大野英男先生。現在は電気通信研究所の所長でもありますが、昨年、指定国立大学に認定されたプランの枠組みで言えば、東北大学の4つの研究拠点の一つ、省エネルギー・スピントロニクス集積化システムセンターの機構長でもあります。4つの拠点のミッションについてはこちらを参照下さい。

東北大学世界トップレベル研究拠点

(画像は東北メディカル・メガバンク機構のFacebookページより拝借。4拠点長は左より、山本雅之東北メディカル・メガバンク機構長、AIMRの小谷元子所長、大野英男センター長、災害科学国際研究所の今村文彦所長)
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さて、まだ馴染みのない「指定国立大学」(英語ではDesignated National University)とは何でしょう?

昨年6月末の文科省公表資料によれば、指定国立大学の趣旨は以下のように説明されています。
 指定国立大学法人は、国内の競争環境の枠組みから出て、国際的な競争環境の中で、世界の有力大学と伍していくことを求められ、社会や経済の発展に貢献する取組の具体的成果を積極的に発信し、国立大学改革の推進役としての役割を果たすことが期待されます。
 指定は、優秀な人材を引きつけ、研究力の強化を図り、社会からの評価と支援を得るという好循環を実現する戦略性と実効性を持った取組を提示でき、かつ自らが定める期間の中で、確実な実行を行いうる大学に限定することとしました。そのため、「研究力」、「社会との連携」、「国際協働」の3つの領域において、既に国内最高水準に位置していること、現在の人的・物的リソースの分析と今後想定される経済的・社会的環境の変化を踏まえ、大学の将来構想とその構想を実現するための道筋及び必要な期間を明確化することを申請の要件として公募を行いました。
平成28年の11月末より公募が開始され、昨年、6月30日付で、東北大学、東京大学、京都大学が指定されました(公表順)。審査は、「外国人を含む外部有識者からなる委員会(「国立大学法人評価委員会 国立大学法人分科会 指定国立大学法人部会」)による書面審査、ヒアリング審査及び現地視察」によって行われました。

東北大学の指定の理由は以下のようになっています。
 我が国の中でも、教育研究の卓越性を誇る大学であり、我が国のシンクタンクとしての機能のみならず世界が抱える課題に果敢に挑戦する使命があり、その取組が進められることが期待される。また、その使命と役割を国内外に積極的に発信し、社会的理解を得ていくことが期待される。
 学内インスティテューショナル・リサーチについて、整えられた仕組みを活用した取組の一層の推進が期待される。
 財務基盤の強化について、明確な目標設定がなされている。大学が保有する資産の有効活用を通じた取組の推進及び社会の支援を得られる仕組みの構築が期待される。
評価のポイントとしては、研究力、社会連携、国際協働の3領域とありますが、論文に占めるトップ10%補正論文数の割合等に加え、国際共著論文比率や大学院生の留学生・日本人派遣学生割合などが着目のポイントだったようです。(以下の表は文科省資料(上記リンク先の別紙2)をもとに作成された日刊工業新聞のサイトより拝借)。

【追記】例えば「論文に占めるトップ10%補正論文数の割合」が「上位10校では10.9%」になっているので、応募の際の参考に、という意味です。
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東北大学では第21代の里見総長の間に「里見ビジョン」として「ワールドクラスへの飛躍」というキャッチコピーのもとに国際化を推進してきましたが、今後、大野新総長のもと、国際化の方向はいっそう進むことになると思われます。
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里見総長の間に行われたグローバル広報の改革も国際化に対応したものでした。東北大学の英語版HP日本語版のミラーリングではなく、ネイティブやバイリンガルのスタッフが独自の記事を作成して掲載しています。

ちなみに、筆者は新年度より正式開講のNeuro Global国際共同大学院プログラムの代表として、生命科学研究科と医学系研究科が共同で行う大学院教育のグローバル化推進に関わっていますが、既存の大学院制度に「加えて」のプログラム推進はなかなかに大変なものがあります。関わる研究者の研究力を損なわずに、国際的に通用する大学院教育を進めたいと思います。ともあれ、国際的環境で脳科学研究を行いたい学生さんは、是非、東北大学へ! 経済的支援制度も充実しています♬

指定国立大学の申請にあたっては電話帳のような厚みの資料を日英両方作るなど、申請する方も評価される方も膨大な時間を使ったことになります。ぜひ、新しい枠組みを活かして日本の大学改革の先導となって頂くことを、大学の一構成員としても、一国民としても願っています。





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by osumi1128 | 2018-01-09 08:00 | 東北大学

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