「一太郎vsWord」だけが問題なのではない

私にとっての監督官庁では、数年前から申請書のアプリケーションがWordのみになっていたが、昨日、Facebook経由で流れてきた話題で某行政機関で省内文書が一太郎からWordに統一された、というものがあった。


それが「働き方改革」の一貫というところにもツッコミどころがあるのだが、改革すべき問題は単に文書作成ソフトの問題だけではない。(画像はAmazonより拝借
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いろいろなところ(主に職場関係、監督官庁関係)で気づくたびに、おせっかいオバさんのように申し上げているのだが、例えば各種の申請が「紙媒体&郵送」だったりする。それが申請書だと、誰かがスキャンしてPDFにし、パスワード付きでメール添付で送られてくる。あるいは、まとめてCD-ROMに格納されて宅急便で届くこともある。

「だったら最初から電子ファイルで受け付けたら良いですよね?」と申し上げると、用意したように「いえ、こちらではそのようなシステムを組む予算も無いのでっ!」と返答されるのだが、「いえ、そんなたいそうなことを申し上げているのではなくて、単に受付アドレスに申請者がメール添付で電子ファイルを送れば済むことではないでしょうか?」とたたみかけると、「……個人情報なので……」。

日程調整をエクセルファイル(パスワード付きだったりする)に記入させるというやり方も、かなり面倒なのだが、きっと偉い先生たちは秘書さんに任せているので気づかないのだろう。

どうも日本では「個人情報」と「情報セキュリティ」が水戸黄門のご印籠のように使われることが多い。私には、IT弱者を食い物にするための情報操作に思える。

言い出すときりがないのだが、業界で「ネ申エクセル」と呼ばれるようなエクセルフォーマットに「旅行伺い」や「伝票」などを入力し、それを印刷して押印するというシステムも時代錯誤。

さて、国産の一太郎の代わりにWordが使われるということ、それが商業ソフトであることは、企業ならまだしも、そもそも行政機関としては、特定の企業の営利に繋がるという意味で問題なのではないだろうか? 

大学関係では毎年秋の科学研究費の申請書について、ボランティアの数学関係者によりLaTeX(ラテフ)でフォーマットしたものが出回ることもある。Wordでは数学の記号が使えないということが発端らしいが、そもそもWordが使いやすい文書作成ソフトかというと必ずしもそうではない(すぐバグるし…。)。だいたい、申請書に必要なツールとしては高度なものは必要ない。

だから、ごく簡単で、これまでWordに親しんできた方でも使いやすい文書作成ソフトを国として開発すべきなのではないだろうか? その場合に、業者への開発委託ではなくて、大学共同利用法人の統計数理研究所あたりに依頼するのが良いかもしれない。

【追記】
話題になっているので、さっそくTogetterにまとめられていました。






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by osumi1128 | 2018-01-18 08:24 | 科学技術政策

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