本日深夜に
Nスペ人体「脳」の再放送があるので、海馬の「歯状回(しじょうかい)」についてのおさらいを載せておく。(画像は元研究員の松股美穂さん撮影の「マウス」の海馬。緑色は脂肪酸結合タンパク質の発現で神経幹細胞・前駆細胞を示し、ピンクはBrdUを取り込んだ増殖しようとしている段階の細胞)。
アンモン角の内側面は、まるで小児の歯のような隆起が一列に並んでおり、歯状回と呼ばれる。この構造を初めて図示・記載したのはTarin (1750)という。歯状回はもともとは海馬の付属物とされていたようで、Vicq d'Azyr は「襞彫り様の、あるいは鋸歯状に凹みを成す内縁」と記述した。これをDöllinger (1814) がgezähnte Leiste(歯状縁) と呼び、Meckel (1817)がfascia dentataとラテン名に訳して使用した。歯状回は、古くは鋸歯状体、海馬歯状膜などとも呼ばれた。
「回」という解剖学用語は「脳回」などのように使われ、ヒダ状になっている構造の「隆起」の部分を指す(対応するのは「溝(こう)」)。
なので、肉眼的に「凸凹した表面」に見える部分について「歯状回」という名前が付けられた。(画像は
『プラクティカル解剖実習-脳』千田・小村著、2012, 丸善出版pp80, より。ただし「海馬傍回」となっている部分は「海馬」とすべき)一方、切片を作成すると、凸凹の部分は鋸の歯のように「ギザギザ」に見えるので、そのような説明も為される。
問題は、マウスの海馬では歯状回の構造がやや異なるので、決して凸凹には見えないし、切片でも「ギザギザ」ではなくて、顆粒細胞層(ぎっしり詰まったニューロンの層)が「V字型」に見える部分が歯状回であるという点(最初の画像を参照)。なので、2月4日に放映された番組での説明は不適切だった訳。ただし、脳科学辞典でも掲載している画像はマウスのものなので、上記のヒトの説明がしっくりしないという点は改善の余地あり。
再放送は本日深夜(2月8日午前1時00分~1時49分)。再度チェック!