平昌オリンピックの成果から科学のサステナブルな発展を考えてみた(その3)

平昌オリンピックから帰国したカーリング女子の地元北見でのインタビューにはぐっと来た。「この町、何もないよね。小さい頃はここにいたら夢は叶わないんじゃないかと思ってました。でも今は、この町じゃなきゃ夢は叶わなかったと思います。」 スポーツによる地域振興はアリだろう。(画像はsputnikより転載。個人的に平昌オリンピックの記憶として残したく今回は女子パシュート)
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さすがにオリンピック関連報道も減ってはきたが、スポーツというジャンルで見れば、大相撲春場所開幕直前、プロ野球やサッカーもそろそろシーズンの始まりなど、話題には事欠かない。新聞の紙面でも必ず「スポーツ欄」があるし、スポーツ専門紙だって売っている。TV報道でも毎日必ずスポーツの時間帯が用意されている。

皆、スポーツの話題が好きなのだ。

かたや、サイエンスはせいぜい週1くらいのペース。ノーベル賞のシーズン(10月初旬の発表から12月初旬の授賞式まで)に、日本人研究者が受賞した場合には1面を飾ることもあり、「子どもの頃はどうだったか」という恩師の話だったり、配偶者の内助の功の話だったり、研究内容とはズレた内容の記事も多い。

New York Timesのようなしっかりとした科学記事がもっとコンスタントに読めたら良いのにと思うのだが、一つには読者層が異なるので難しいのだろう。

卵が先か鶏が先か、読者が少ないから科学記者やサイエンスライターが少ないのか、科学記者やサイエンスライターが少ないから読者に十分なサイエンスの情報を伝えられないのか……。きっと両方だ。

アスリートのキャリアパスの詳細まで把握できてはいないが、選手を引退した後にはコーチや解説者のキャリアがある。羽生選手と同じ仙台出身の荒川静香さんは、2006年のトリノオリンピックで金メダルを取った後、引退してアイスショーなどの活動に加え、各種フィギュアスケート大会の解説、その他、ラジオ番組などのタレント業を行っている。

スポーツの解説も聴けばなるほどと思うが、見てそのまま感動できるからファンが多く、メディアでの露出も高いのだろう。かたや、サイエンス活動はそのまま絵になりにくい、つまり何をしているのか一般の方にはよくわからない。また、いかにも、な白衣を着てピペットを持った生命科学系の研究者のイメージだけ見ても、発見の本質は抽象的なので、一枚の写真でオーディエンスが感動できるというものではない。だからこそいっそう、科学解説者は必要なはずだ。

個人的には博士号を取得した方の中で、もっとサイエンスライティングを専門とする方が増えると良いなぁと思う。Google翻訳はかなり賢くなったが、一般向けの科学の良書は英語では次々と出て来るので、その和訳を出して頂けるだけでも有り難いし、できれば日本語オリジナルのものももっと欲しい。科学書籍なんて売れないでしょ、と言わずに、電子版だけでも良いからコンテンツは増えると良い。

そもそも、日本ではサイエンスライティング専門の大学院コースなどが無いというところからして科学の世界がサステナブルではないことも、施策として真剣に考えた方が良いかもしれない。調べたところ、一番充実していそうなのは筑波大学の大学院。ただし「共通科目」の中の「情報伝達力・コミュニケーション力養成 科目群」として、サイエンスライティング、プレゼンテーション、その他の科目が開講されているようだ。ちなみに、サイエンスライティングの講師はダーウィン書籍の翻訳で有名な渡辺政隆先生。





by osumi1128 | 2018-03-04 08:20 | 科学技術政策

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