『蘇るサバ缶 震災と希望と人情商店街』読了

3月8日は国際女性デーだが、ミツバチの日でもあり、鯖の日でもあるらしい。その日に合わせ『蘇るサバ缶 震災と希望と人情商店街』という書籍が上梓され、ノンフィクション書評サイトHONZさんのお勧めにより、思わず1Clickしてゲットした本書を一気読み。
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東日本大震災は死者・行方不明者が2万人規模の大災害であったが、中でも宮城県石巻市は被害の大きい地域だった。仙台在住ながら、水産会社「木の屋石巻水産」と、本書の筆者、須田泰成氏の地元である東京都世田谷区経堂の商店街の間に繋がりがあるということを今まで知らなかった。

工場のあった土地に津波で泥に埋まった缶詰を掘り出して経堂に運び、ボランティアの方々がタワシで洗って綺麗にして売った数がなんと22万缶とのこと。そもそもはこの鯖缶が美味しいという評判で、いろいろな飲食店でメニューに使われていて、震災後に石巻を助けたいという思いから、支援物資を送る帰りに埋まっていた鯖缶を経堂に輸送するというwin-winルートが確立したらしい。様々な方々が鯖缶を洗ったり、それを買ったり食べたりした。そして木の屋石巻水産は復活した。

高校時代まで神奈川県逗子市に住んでいたので、鯖は地元の漁港に上がる身近な魚であり、魚屋さんが朝、御用聞きに来てくれて、「今朝上がった鯖がありますよ!」と言うと、祖母は「じゃぁ、〆鯖にしてちょうだい」と言って、夕方に届いた〆鯖を切るだけ(笑)で、美味しい〆鯖が食卓に上った。後にDHAなどの高度不飽和脂肪酸がリッチに含まれるということも知るようになったが、足が速いのはそのため(二重結合が多い)。木の家の鯖缶は、新鮮なうちに缶詰にするとのこと。本書にあるようなストーリーを知らずに何度か、この水煮缶を食べていた。(画像は同社のオンラインストアより拝借)
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木の屋石巻水産はもともとは鮎川で上がる鯨の加工会社として創立されたらしく、会社のHPを見ると鯨の缶詰が最初に挙げられている。そんなことも本書を読むまで知らなかったことは、父が鯨の研究者だったのに情けない。「サーバー管理」のことをIT業界用語で「サバ管」と言うことも知った。

書評というカテゴリでのブログ記事にしようと思って書き始めたが、本書について何かを語るのは……なんだか気が引ける。というか、言葉が見つからない。先に挙げたHONZの書評や下記のリンク先などを見て頂ければ有り難い。

東北地方の震災復興というのは7年経って終わったというフェーズではないことだけは記しておきたい。自分自身、置かれた立場で何ができるかを改めて考えたいと思った。

他にも書評やお知らせ記事:



by osumi1128 | 2018-03-17 07:46 | 書評

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