3月25日(土)に東京大学大学院情報学環・福武ホールの福武ラーニングシアターにて、新学術領域「個性」創発脳の主催による第1回市民公開講演会「科学者として/当事者として研究すること」を無事に開催することができました。
講師の
熊谷晋一郎先生(東京大学先端科学技術研究センター准教授)には、当事者研究とはどのようなアプローチであるのか、そのことによって当事者にとってどのようなメリットがあるのかなどを、発達障害を中心として解説頂きました。
第二部では熊谷先生との対談の最初に、動物を用いた基礎研究の立ち位置や意義について、また、当事者の方々にも人間を対象とした研究だけでなく、メカニズムの追求のために行う動物研究についても興味を持って頂けたら嬉しい、というようなことを話させて頂きました。
熊谷先生からは「むしろ当事者研究と基礎研究の方が馴染みが良いのでは?」というコメントも頂きました。
領域HPへの報告については追って掲載させて頂きます。
今回、初めて文字通訳による「情報保障」を行いました。福武ラーニングシアターのスクリーンの横幅が広いものであったため、熊谷先生のPPTを表示する画面の左側に、4名の文字通訳者がタイプするテキストがリアルタイムに表示される、というやり方を取りました。これだと、聴覚に不自由を感じる方にとって、文字による情報保障と発表者のスライドが同時に見やすいというメリットがあります。
文字通訳の会社さんには、直前になってのお願いに対応頂き感謝しています。
熊谷先生のお話の中にも「知ることが生きやすさに繋がる」という言葉がありました。国立国会図書館の入り口近くの壁には「真理がわれらを自由にする」という額が掲げられています(出典は新約聖書、ヨハネによる福音書8:32。詳しくは
拙ブログ記事参照)。そうであるとすれば、せっかく一般向けの講演会を行っても、聞こえに困難のある方にはバリアがあり、膨大な量の情報へのアクセスから遠ざけられてしまっているということになるのだと、改めて気付かされました。
自分自身、科学コミュニケーションの重要性をあちこちで提唱していながら、足元が固まっていなかったことを猛省しました。また本学においては学生への支援はあるものの、教職員までふくめたバリアフリー対応ができていないということも、この準備の過程で知りました(
東京大学にはバリアフリー支援室という部署があります)。
今後関わる市民向けのイベントについては、聴覚バリアフリー化を率先していきたいと思います。
【参考リンク】