「都会化」が止まらない

今回の出張では、ロンドン、ドーキング(ロンドン郊外)、ウィーンを訪れた。ロンドンの宿泊先がウォータールーのエリア、訪問先のクリック研究所がキングズクロス駅の向かい側で、どちらも建設中の建物やクレーンなどがあちこちに見られた。ウィーンも学会場周辺は旧市街から離れたところにあり、モダンな建造物が多かった。東京では、丸の内や日本橋あたりの再開発が進んでいる。
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出張帰りに出席した都内会議の折に、そんな話を持ち出すと、とある先生が「ニューヨークでも建設ラッシュのところがありますね。上海の30階以上の建物は東京の10倍の数だと聞いています」と言われた。「新たな会社が入居するのではなく、もともとの会社がより新しい設備の建物に移ったり、郊外の一戸建てから都会のマンションに移住する人が増えているからですね」とのこと。

「都会化」の流れは止まらない。場所によっては加速している。もちろん、取り残される地域はあるけれど。

どの著作だったか忘れたが、確か、養老孟司先生は「都市」と「田舎」をそれぞれ「脳」と「身体」に対応させ、歴史的に見れば、人類はどんどん「脳化」する方向になっていると言われた。脳がどんどん身体から離れた存在になっていくことによって、生き物としてのバランスを失っていくのかもしれない。

「都市化」は人間が自然環境に介入できることを知ったときからの方向である。洞窟での暮らしから家を建てるようになった時点で、その方向は決まっていた。人間は自分にとってより良い生活環境を整えることによって種としての存続を繋げてきた。

「都会化」が悪いと主張するつもりはない。より最近の「都会化」は、車椅子対応などの面でユニバーサル・デザインを目指しており、身体に不自由がある方(老人含め)にとって有り難い環境となっている。だからこそ、高齢者の中には郊外から都心に引越すのだ。ただし、子どもが育つ環境として、バリアフリーな道は、もしかしたら身体能力の発達を損なうことにもなっている可能性がある。室内の遊び(今ならスイッチなどか?)が多くなることによって、子どもの「ロコモ(ロコモーティブ・シンドローム)」が増えているという。

「都会化」はこれからも進むとして、その中でどのような環境を整え、脳と身体のバランスを取っていくのかをよく考えた方が良い。都市開発は工学の専門家だけではなく、人文社会系の視点も必要だろう。


by osumi1128 | 2018-06-21 07:35

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