セクハラと不正行為

ここ数日は仙台でも寒さが緩んだ感じである。
このまま春になってくれればと思うが、なかなかそうはいかないことを経験している。

さて、韓国のファン教授のヒトクローンES細胞捏造論文をきっかけに、科学者の不正行為についての論議がしばらく前に盛り上がった。
日本国内での問題についても、この影響でプロセスが早く進んだかもしれない。
まだどのようになるのか分からないが。

理系白書ブログでも2月11日のエントリーに取りあげられたが、先週土曜日朝刊の毎日新聞の「論点」というコーナーに寄稿した。
新聞では「求められる自浄作用」というタイトルを付けて頂いたが、内容は「エッセイ集」の方に元原稿を載せてある。
サブタイトル的な「科学は市場原理に則らない」という主張は字数の関係であまりしっかりと議論できてはいないのだが、編集デスクの方に気に入って頂いたようだ。
ちなみに、黒川先生も寄稿されていたので、学術会議総会でも取りあげられた。

科学者の不正行為(ミスコンダクト)については 、学術会議では「機能別委員会」の中の「科学者委員会」という常置委員会が扱うことになっている。
いずれ「科学者憲章」といったものを出すことになるのだと思うが、それはそれとして、黒川先生がなかなか興味深いことを言われていた。
不正行為は現場の研究室ではきっと分かるはず。それを匿名で告発できるようなシステムを、それぞれの研究機関が持つべきではないか? ちょうど、セクハラ防止対策委員会やセクハラ相談窓口があるように、ミスコンダクト相談窓口がまず先に対応すべきではないか?

外からの規制よりも、まず中で対応すべきという主張は、私も同意見である。
セクハラの範疇には、当事者同士が了解であっても、その周囲の人が当事者達の行為によってハラスメントを受けるという場合も含まれる。
論文捏造の場合に置き換えると、仮にボスと筆頭著者の利害が一致していても、その周りの人たちの倫理観がそれを許さなければ、相談窓口に申し出ればよい、ということになる。
パワハラの問題もあるだろうから、申し出は匿名として扱う。
その後のステップはセクハラと同様で、調査委員会が設置され、事実確認を行った後に、しかるべき対応について考える。
セクハラと同様に、こういう防止対策の仕組みを作ること自体がミスコンダクトを防ぐことになるのではないだろうか?

勿論、大学としては倫理教育をしなければならないし、ラボヘッドの研究者自身が不正行為をしないという態度を示すべきであり、私の主張としては、ラボ内外で互いの目が行き届くこと、風通しのよい環境を作ることが不正防止に必要であり、学会や研究機関の監視機構は、その外側にあるものと思う。
by osumi1128 | 2006-02-16 00:53

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