2018 年 8 月 3 日に英国の高等教育機関情報誌タイムズ・ハイアー・エデュケーション(THE)により発表されたThe World’s Best Small Universities 2018(世界最高の小規模大学を選出するランキング)において、母校、東京医科歯科大学は我が国で唯一ランクインし、日本国内第 1 位、世界で第 15 位の大学に選出された。とくに歯学部は、世界大学評価機関のクアクアレリ・シモンズ(QS)が 2018 年 3 月 1 日に発表した分野別 QS 世界大学ランキングでも日本第 1 位、世界第 5 位と健闘、……というと、それなりにカッコいいかもしれないが、私が卒業を前にして大学院進学を考えていたとき、いくつかの臨床系の医局・研究室を訪ねると「あー、うちは女性の大学院生は取らないから……」とはっきり拒絶された。今から30年前のことである。
そのおかげで基礎系の研究室に進学し、思った通りに研究が進まず、人生最大(当時)の挫折を味わったりしたものの、なんとかキャリアを繋ぐことができた。私の学年では、歯学部定員80名のうち、女性が確か11名、大学関係に今も残っているのは3名だったかと思うが、他の方も卒業後、すぐに開業した方もいれば(当時は初期研修制度が無かった)、フルタイムだったりパートタイムだったり、免許を活かしたキャリアに就いていると思う。
7月末に報道された某医科大学の女性差別入試の件は、自分が大学院進学当時、「うちは女性の院生は取らないから……」と言われた事実に対して、「そんなものか……」と反発まではせずに受入れたことを思い出させた。日本国憲法第14条には「1.すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と書かれているが、「女性であるために、大学院への進学を認めない」というのは明らかに憲法違反である。某医科大学の事例も同様だ。
にもかかわらず、「女性は結婚、出産、育児などで離職するから(大学進学時、大学院進学時に受入れない)」というまことしやかな<理由>を、憲法制定後、女性も受入れてきたのだ。やはり、これは間違いであったことを、今、改めて考える好機としなければならない。
別の折、とある審査を行う過程で、若手の女性の応募者が非常に少ないことにびっくりした。生命科学系なので、女性が20%くらいいてもおかしくないはずなのに、なんと5%も応募していない。その応募は複数回可能であるにも関わらず、男性では二度目、三度目の応募者が10名程度はいたと思うが、女性はゼロであった。先人の先生方や我々がこんなに頑張って女性研究者を育成しようと努力してきたつもりが……と思うと、本当に辛かった……orz
ここからの考察はあくまで私見であるが、いくつかの理由を考えてみた。
①現在40歳未満の年代で、優秀な自然科学系の女性研究者が非常に少ない。その理由として、優秀な女性研究者は出産や育児のために研究キャリアから退いている。
②仮に大学学部レベル・修士レベルで女性が25%程度進学していたとしても、その多くはより安定的なキャリアを目指すことができる別の業界で職を得ている。
③現在40歳未満の優秀な女性研究者は、さっさと日本に見切りをつけて海外で活躍している。
④女性研究者は一度、挫折すると、男性よりも再チャレンジすることに躊躇する。
さて、このような仮説のどれがもっとも可能性が高いのか、あるいはさらに他の理由があるのか、それが知りたいのですが、残念ながら、手元のメーリングリストは現役の女性研究者や、定年までキャリアを繋げた女性研究者で構成されているので役に立たず、また、学協会関係のルートには若手は含まれるものの、やはり現在、研究業界に在籍している母集団となります。
そこで、こちらの拙ブログを読まれた方で、いったんは理系進学されたり、研究者を目指したものの、現在は異なる環境におられる方があれば、ぜひ、ご自身のキャリア遍歴、生活環などについて、コメントを残して頂けないでしょうか?
どうぞよろしくお願いいたします。