科学者の不正行為について

すでに多数の理系ブログで扱われている話題で、こちらでも触れましたが、大阪大学の論文ねつ造事件処分(追記3あり)を踏まえて、私見を述べておこうと思います。

論文の著者の中では、何人の共著者がいたとしても、first authorとlast authorもしくはcorresponding authorという人たちがその他とは破格のクレジットと責務があると思います。
結論から言うと、私はcorresponding authorという人間がその論文の一切の責任を負うものと思っています。
その上で、どの程度first authorの責任があるのかは、その人物のキャリアや能力次第だと考えます。

生物系の友人は「故意に捏造されたデータは見抜くことができない」と言っています。
私もこの意見を全面否定することは残念ながらできないと思います。
ただし、研究室を主催する人間は「捏造・改竄」を許す環境を作ってはならない、それを未然に防ぐための最大限の努力をする責務があると思います。
データはきちんと記録し、保存することを教えたり、研究室内外のコミュニケーションを良くしておくなどが必要なことでしょう。
個人個人の倫理教育というのは、研究室に入ってからだけでなく、それ以前の初等中等教育も大切なことだと思います。
(ゆとり教育制度以降、「道徳」という教科は、今どのように教えられているのでしょう?)

その上で、もし不幸にも、非常に(ある意味)頭の良い学生(ポスドクでも)が非常に仮説にあった理想データを抱えてきて、論文に仕上げる際の議論でもどこも綻びが出なくて、その論文が受理されてしまった後に、それが捏造や改竄だったということが分かった場合には、corresponding author(およびPI)は一蓮托生で責任を負うべきだと思います。
そういう学生なりポスドクを研究室に参画させたことは、研究室主催者の運命というか、人徳の至らなさとして受け入れるしかないと考えます。
研究室主催者になるということは、そういうことではないでしょうか?

その場合に、どのような「処分」が妥当であるかというのは、非常に難しいものがあると思えます。
懲戒停職2週間と1ヶ月の重みがそれぞれ適当なのかどうかは私には判断できません。
しかし「指導力不十分」な教授は、それ以降学生の指導からはずすということも必要なのではないでしょうか?

理想としては、責任をとって自ら職を辞すべきだと思います。
それが科学者コミュニティーに対する責任でもあると考えます。
by osumi1128 | 2006-02-20 01:26

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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