新世代の料理家さんたちに会ってみたい

料理本を眺めるのが好きだ。私にとっての料理本の古典は、石井好子さんの『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(今見たらKindle版があった!)、桐島洋子さんの『聡明な女は料理が上手い』あたりだろうか。その後、上野万梨子さんの『Dessert』、『「分とく山」野崎洋光が説く 美味しい方程式』などを経て、栗原はるみさんと有元葉子さんの時代に突入していた(個人的には有元派)。いったい何冊買ったかわからない。全部作る訳でもないのに……。このお二人の書籍はKindle版にも移行している。別ラインとして、『丸元淑生のシンプル料理』にも大いに影響を受けた。こちらは科学的・合理的な説明に軸足がある。もちろん、世の中には他にも多数の料理家と言われる方々がおられる。「つくりおき」に特化したレシピや、料理投稿サイトクックパッドの記事をもとにした料理本も出ている。伝統のある『暮しの手帖』、『栄養と料理』、『四季の味』、『Elle Cooking』などは、今や、さらにたいへんな時代になってきた。

さて、昨年くらいから、明らかに違う世代の料理家が増えてきたことに気づいた。何が違うかというと、年齢ではなく、どうもSNSを駆使したセルフプロデュースができるかどうかということなのだと思う。

自分で文章も書き、写真も撮る。それを自分でウェブに公開し、TwitterやInstagramで拡散する。もちろん、プロのカメラマンや編集者とコラボすることもあるし、料理教室を主宰されている方などもおられるようなのだが、以前の世代とは明らかに「自立度」が違う印象を感じている。

例えば、私のTwitterタイムラインに流れてくるのは以下のような方々。順番はほぼ、Twitterアカウントをフォローした順。

寿木けいさん:「今日の140字ごはん」というTwitterアカウント名で日々のお料理を上げておられた方。最近、出版社勤務から独立された模様。ブログ記事はこちら。140字のレシピなので、素材や調味料の分量などは感覚的(なので、初心者向きではない)。『四季の料理』に挙げられていたレシピのような書き方を、Twitter向きに画像+140字にしたところがポイント。『レシピとよぶほどのものでもない わたしのごちそう』は名著だと思う。器のセンスも素敵。

白央篤司さん:Twitterアカウントによれば、郷土料理がテーマのフードライター。このお正月はTwitterのフォロワーに「地元のお雑煮を教えて下さい」という呼びかけをされていた。ブログは「メシ通」。昨年6月の「香川の「なすそうめん」はこの夏ゼヒ試してみてほしいうまさだった【フカボリ】」という記事が目に止まってフォロー。著書『自炊力』は、料理初心者や料理に抵抗のある方にとっての良書。コンビニで売っているアイテムも利用しつつ、栄養バランスの良い健康的な食事のベースを作るのに参考になるだろう。

冨田ただすけさん:料理研究家として「白ごはん.com」というサイトを運営。副題には「おもてなし料理から和食の基本まで♪ 一番丁寧な和食レシピサイト」という説明がある。図解や動画もわかりやすい料理サイトなので、食材の切り方など含めた基本をマスターしたい人には有り難いはず。Twitterアカウントは「白ごはん.comをやってる人 @shirogohan_com」

有賀薫さん:肩書は「スープ作家」。365日、スープを作り続ける、というセルフブランディングを成し遂げた方。cakesという媒体に記事を書かれていて、それを元にしたレシピ本がいくつか出版されている。このcakesという媒体が新しく、会員登録して読める記事があったり、書き手も自分の作品を自分で値段を付けて売ることができるシステムだ。
私がKindleに入れているのは『スープレッスン』というもの。ちなみに、iPadで料理レシピを開く方が、紙の本よりはキッチンでの使い勝手が良いので、最近、購入しているのはほぼ間違いなくKindle版。
材料の数が少なく、レシピが簡単なので、『帰り遅いけどこんなスープなら作れそう 1、2人分からすぐ作れる毎日レシピ』なんていうタイトルの本(Kindle版ももちろんあり)まで出ている。(それにしても、日本語の本はタイトル・サブタイトル長くて説明的過ぎる気がしますが……。)

樋口直哉さん:Wikipediaによれば小説家で、本業はフランス料理の出張料理人となっている。同じくcakesにコンテンツをたくさん上げておられ、それをベースにした『定番の“当たり前"を見直す 新しい料理の教科書』という本・Kindleも出ている。
服部栄養専門学校出身ということもあるのだろう、説明が「理論的」な点が特徴。例えば「作り置きの定番『筑前煮』をカガクの力でおいしくつくる」という記事では、以下のような説明が書かれている。
「……煮物の定番、筑前煮。もともとは九州地方の〈がめ煮〉という郷土料理でしたが、学校給食で採用されたのをきっかけに全国に広がりました。味の構造としては、グルタミン酸が豊富な醤油+イノシン酸を含む鶏肉+グアニル酸を含む干ししいたけの旨味を重ねていき(旨味の相乗効果)、冬の時期においしくなる野菜をこっくりとした味に仕上げます。……」

山口祐加さん:Twitterのプロフィールによれば、フードプランナー、ライター。食をテーマに企画・ライティング・出張料理などの仕事を行っているとのこと。別アカウントの#今日の一汁一菜では、シンプルな汁物とおかずの組合せを日々更新。#週3レシピといって、3回作る料理で一週間回すというコンセプトも面白い。

などなど、年齢や性別ではなく、ディジタルツールを自ら駆使できるかどうかが「新世代」のクライテリアであり、セルフ・ブランディングをどこまでできるかによって、人気が決まってくるのだろう。それが可能になったのはまさに、IT化だったり、ディジタルカメラの性能が上がったりという付帯状況もあったからこそ。ツイッターのつぶやきやブログ的な記事にもお人柄は表れるが、どんな方なのか、実際に会ってみたい。


さて、こうして本ブログでまとめて整理したのには訳がある。先日、本学のダイバーシティ研究環境実現プロジェクトの一環である「マネジメントセミナー」に、本学卒業生でもある山極恵美子さん(元雑誌GINZAの編集長)を講師としてお招きし、「キャリアブランディングとしてのファッション- 仕事で成功するための服とは?-」というお題でご講演頂いたところ、参加者多数で大好評であった。

来年度もぜひ、皆さんを元気にするセミナーを企画したいと目論んでおり、「だったら、次は<食>かなぁ……」とぼんやり考えている(……先に片付けなければならない案件が多数なので)。

例えば、過日、「Nサロン」というNIKKEIとnoteがコラボした会員限定セミナーで、有賀薫さんの「家庭料理の新デザイン」という3回コースの初回が開催されたらしい。家族のあり方が変わってきている社会では、「家庭料理」を再定義し、それぞれの家庭にあったルールを作れば、家庭料理のハードルも下がるだろう、という、そもそも料理を作る前のお話があったとのこと(すべてweb経由情報)。料理とは作業ではなく、マネジメントである、という考え方も大事だと思う。

「こんな講師を希望する」などのご意見については、本ブログのコメントか、私のTwitterアカウント(@sendaitribune)へのリプライでお願いしたい。

【追記】
ちょこちょこ追記したりしてアップデートします。何かサムネイルになる画像があった方が良いと思って、自分のお手軽料理から選びました。パパ・ブッシュのスピーチで有名になった、嫌いな子どもの多い野菜であるブロッコリーですが、蓋のできるフライパンでオリーブオイルで焼き付けて、ほんの少しの水を入れて蒸し上げるというのが、簡単でもっとも美味しいと思っています。こちらは丸元さんのレシピがベースです。
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by osumi1128 | 2019-02-16 20:55 | 味わう | Comments(0)

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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