理工系学生のためのキャリアガイド
2006年 02月 26日
原著は米国科学アカデミー(NAS)ほか編であり、原題はCareers in science and engineering: a student planning guide to grad school and beyondとなっている。
翻訳は小川正賢氏(広島大学)、副題は「職業選びに失敗しないために」であるが、これはちょっとネガティブな印象。
原著が出版されたのは1996年で、ちょうど第1期の科学技術基本計画が策定され、「ポスドク1万人計画」が打ち立てられた年だ。
それから翻訳本が出るのに6年もの月日が必要だったのは、ちょうどそのくらい後から日本がアメリカの後を追いかけているということだろうか。
各章のタイトルを挙げておこう。
1章 職業人生を考える
2章 職業の見つけ方
3章 成功するためのスキルと属性
4章 就職目標到達に向けて
5章 適職を求めて
6章 職探しは自己責任で
本書の中には「キャリアガイド」として、沢山のキャリアパス事例が載っている(もちろん男女とも)。
例えば「化学エンジニアから建築設計士に」「物理学者から金融研究者に」「分子生物学者から科学政策アドバイザーに」「看護婦(原文ママ)から研究マネージャーに」などなど。
また「シナリオ」として、問題をより具体的に考えるためのコラムもある。
「職を探す」
キャロルは生物学で博士号を取得し、分子遺伝学のポスドクを2年間行ってきている。彼女は、・・・ポスドクの期間が終わる前に、自分の専門領域の研究を行っているいくつかのバイオテクノロジー系企業に応募した。しかしそのすべてで不採用となり、彼女は非常に驚いた。企業のなかには、彼女はコミュニケーションスキルに問題があること、「企業的な組織」のなかでの仕事に不慣れだということをしてきしたところもあった。
>企業側はキャロルに何が欠けていると見なしたのだろうか。
>産業界での職を目指すのであれば、彼女はどのようにすべきだったのだろうか。
(回答例は巻末にあり)
なお、原著はNASのホームページからダウンロードできるようになっている。
翻訳された内容が、日本の現状に照らしてすぐに役立つことばかりではないだろうが、学生さんやポスドク等の若手スタッフを抱える身としても、なるほどと思うことがいろいろあった。