先日、日本のアカデミアの状況を憂える錚々たる先生方が集まる私的な機会があり、その末席に加わらせて頂いた。自分も20分ほどの発表時間を頂いたので、女性の活躍が今後の日本のアカデミアの発展に重要であるという視座からお話させて頂いた。
参加者の中で女性は結局、私1名であり(当初、もう1名予定されていた)、私にとっては親の世代の方々がマジョリティというメンバーの中でアウェイ感もあったが、あちこちでさせて頂いている話を今回の聴衆に合わせてさせて頂いた。
世代間のギャップが著しいので、例えば「女性が働くと子どもが少なくなる?」というスライドで、新鮮な驚きを感じてもらえたことは、この場で話をした甲斐があったと考えても良いかもしれない。使った資料よりも新しいものを探して、中小企業白書(2011年度版)からの図を挙げておく。
我が国の少子化を食い止めるには、男性の育児関与が「一丁目一番地」だと筆者は考える。その根拠は以下のデータである(平成30年度少子化対策白書より)。

これは、子どもがいる夫婦のうち、夫が「週末に」家事・育児に関与する時間別に、第2子の有無を調べたものであり、家事・育児時間の無い家庭では、90.0%が第1子のみであり、6時間以上であれば9割が第2子を得ていることがわかる。
「若い方向けに話をするときには、女子学生向けには<家事・育児に関わる男性を伴侶にした方が良いよ♫>と伝え、男子学生には<家事・育児に関われないと、子どもを持てないかも?!>と話しています」とオジサマ方にもお伝えした。
もう一つの少子化の理由は、教育にかかる費用だ。日本は公的教育費支出の対GDP率が3%に満たない、いわば「教育軽視」の国である。子どもに中等教育(高等学校)まで受けさせようとすると、すべて公立として約540万円(すべて私立だと約1,770万円)、これに大学以降の費用まで親が面倒をみるとすると、2人目、3人目は困難と考えても仕方ないだろう。(データはH29年12月22日付け文科省報道発表資料「平成28年度子供の学習費調査の結果について」より)
上野先生の祝辞を読んだあと、日本でなぜ、リーダーとなる女性や理系に進む女性が少ないのだろうかと、もう一度、考え直している。現在の仮説は、「いくつかの施策がバラバラに進んだこと、その原因として文理の壁と、国家公務員の短期異動という慣習がある」というものだ。
具体的には、共同参画の司令塔は内閣府男女共同参画局であり、歴史的には旧文部省(どちらかというと文系)の女性教育会館などが教育面での女性参画の問題が扱われ、後から科学技術分野における女性の参画が著しく遅れているということを打破するために、旧科学技術庁系の予算で「ダイバーシティ研究環境実現」のための事業が行われている。
おそらく、これらを一本化しないと、社会の意識を変えつつ女性の参画を進めることが困難なのではないかと考える。また、事業の担当者が2年程度で入れ替わる慣習では、誰もきちんと責任を持って推進することができない。
ここで取り上げている共同参画だけでなく、科学技術政策そのものも同様である。縦割りの考え方や、短期異動の慣習そのものを変えないと、あらゆる面で日本の将来は無い。