法医学会の共同参画イベントで話しました

同僚の舟山眞人先生が大会長を務められた第103次日本法医学会学術全国集会に呼ばれて、共同参画のセッションで登壇しました。仙台サンプラザという会場で、控室は「過日、浜崎あゆみが使った」とのこと♫

法医学会としては男女共同参画関係のセッションを組んだのは初めてとのこと。法医学は医師、歯科医師だけでなく、多様なバックグラウンドの方々の協力の上に成り立っている分野ですが、実は医学系の中では比較的女性が働きやすい分野と考えられており、女性教授の割合も多いという特徴があります。対象が生身の患者さんではないからですね。

セッションは一番広いA会場で行われ、舟山先生の座長により基調講演をさせて頂いたのですが、この手の企画の割には男性の参加者が非常に多く、びっくりしました。今回の主張としては共同参画を進め、男性も女性も働きやすい環境にするために「無意識のバイアスに気づくこと」が重要ということにしました。
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シンポジウムの司会は井濱容子先生(横浜市大教授)と工藤恵子先生(元九大講師)。登壇者は順に佐藤文子先生(北里大学教授)、松末 綾先生(福岡大学講師)、笹尾亜子先生(熊本大学助教)、佐野利恵先生(群馬大学准教授)。それぞれ、異なる職位やバックグラウンドからのご参加で、多様性に富む充実した発表内容でした。それぞれのタイトルのみ残しておきます。

●女性医師が法医学領域で活躍するために
●出産・育児に関する社会支援制度の活用
●熊本大学における男女共同参画推進のための取組みについて
●「指導者、メンター、ロールモデル」女性研究者を育み支えるための3本の矢

興味深かったのは、質疑応答の時間(私の講演が予定より長く、押してしまったために、あまり長く取れなかったのですが)に真っ先に手を挙げられたのはすべて男性。お一人目は、佐藤先生に対する質問で、佐藤先生のケースではお子さんが自閉症で普通学級で学ぶことが困難であったことから、高校教師であったご主人が仕事を辞めて専業主夫となった、という個人的なエピソードを話されたことについてでした。

その内容は「女性は高学歴、高収入でも、自分が一家の大黒柱になることは避ける方が多いと思うが、なぜ先生の場合には先生が仕事を続け、ご主人が辞めたのか? 家庭内でそれについてどのように話し合われたのか?」という、たいへんストレートなものでした。

あくまで想像ですが、このような気付きが、まさに「無意識のバイアス」があることの反映であると思われます。男性の方が常に高学歴、高収入、高身長でなければならないことはないはずです。女性の方が年上であっても構わないでしょう。子どもを産むことは残念ながら、男性にはできない特質ですが、男性に子育ての能力が欠けている訳ではなく、家事も育児も参画可能であることは、世界の状況を見れば明らかです。(下記の図は、「平成30年度版 少子化社会対策白書」より講演でも使いました)
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男性にその能力はあるにも関わらず、家事や育児ができないのは、paid-workの時間が諸外国に比べて圧倒的に長いからです。(下記の図は東北大学男女共同参画推進センター作成)
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週休2日のフルタイムの方が、1日10時間働くというのは、9時から始業とすると夕方8時までなので(昼休み1時間として)、まぁ、ありえない話ではないですが、毎日この状況が続くとすると、1日あたり2時間、月に40時間の残業となる訳で、それは精神的、肉体的にもよろしくないでしょう。また、雇用者側としては、残業代分の人件費もかかっています。

つまり、日本の生産性が低いのは、無理に働かなければならない状況を作り出していて、そのことによってストレスがかかった状況で就業することが慢性化し、さらに生産性が低くなるという負のスパイラルなのだと思います。

もう1名、質問された男性の方は、「数値目標は必要か?」ということがご質問の趣旨であったと思いますが、私の方に回答を振られたので、「少ない方の性が組織の3割を超えるまでは必要と考える」とお答えしました。例えばカナダの政府主席科学顧問のモナ・ネメール博士や、総合研究大学院大学学長の長谷川眞理子先生なども「3割の壁」について話されています。東北大学の男女共同参画委員会も、構成員の一方の性が3割を下回らないこととしていますが、今では3割を越えて、4割以上が女性の委員となっています。


ともあれ、法医学会会員の方々の関心の高さを感じることができた2時間でした。法医学から医学をさらに変えて行くことも可能かもしれませんね。


by osumi1128 | 2019-06-15 08:48 | ジェンダー | Comments(0)

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