先週、東京→岡山→神戸と出張が続いたのですが、その最後が第19回日本蛋白質科学会年会/第71回日本細胞生物学会大会 合同年次大会 サテライトシンポジウムとして行われた「
International Symposium for Female Researchers in Chromatin Biology 2019」という企画でした。よくよく見ると、オーガナイザーには男性が含まれているのですが、スピーカー12名とオーガナイザー3名が女性。女性研究者の活躍を見える化しようという意図でした。加えて、欧州の学術団体EMBOの共催によるリーダーシップのワークショップも開催されました。
スピーカーの1人の原口徳子先生(国立研究開発法人情報通信研究機構、未来ICT研究所フロンティア創造総合研究室,主任研究員)とは、今から20年ほど前に、分子生物学会のシンポジウムでご一緒しました。そのシンポジウムも実は5名前後の分子生物学分野の女性研究者を集めたのですが、その当時ですので、分野もかなりバラバラで、単に女性を集めてみました!という企画となっていて、声がけくださったことはありがたいのですが、登壇者の女性にはかなり不満が残りました。もっとも、その愚痴でシンポジウム後の懇親会が盛り上がったのでですが……。
実は、分子細胞生物学そのものは成熟した感があると感じていましたがが、スピンアウト的に興味深い分野の一つがクロマチン生物学だと思います。つい数日前にも分子細胞生物学系雑誌の衰退に関する記事を読んだところでしたが、その主張は「生化学を含めた分子生物学は、この20年間、注目を浴びて引用数が伸びる論文が全体としては減っているのではないか」ということでした。「分野「分子生物学および遺伝学」はここ10年間、年ごとの総論文数は増えている一方、被引用数の合計は同じ割合では増えておらず、1論文あたりの平均被引用件数が減少しています。」とのこと。
この記事の中で実は、興味深い記載がありました。「分子生物学系でもインパクトが最近漸増している雑誌があります。それはNucleic Acids Research。」この雑誌には実はクロマチン生物学系の論文が多数含まれています。(画像は同note記事より拝借)

私自身はクロマチン生物学という分野に関しては新参者ですが、精子形成過程におけるヒストン修飾や、クロマチンリモデリング因子としてのPax6役割などに興味を持っているところです。今回のシンポジウムに参加して興味深いと思ったのは、細胞の中の小さな核の中に含まれる染色体の構造そのものにアプローチする新規の手法がいろいろと考えられている点でした。クライオ電験も重要ですし、レーザーで核の一部を切り取って、その中に含まれるDNAやタンパク質を分析するなどの高度なテクニックが可能になっていることに、改めて素晴らしいと思いました。
声がけしてくださった共同研究者の岡田由紀先生(東京大学定量生物学研究所准教授)に感謝します。