過日、
総研大学長の長谷川眞理子先生が「好書好日」に取り上げておられた
『なぜ女性管理職は少ないのか』(大沢真知子編著、日本女子大学現代女性キャリア研究所編、青弓社)を読みました。
某公共放送番組で人気の「チコちゃん」風に一言で言うのなら、「なぜ(日本では極端に)女性管理職は少ないのか?」の答えは、「女性が管理職を望まないから」ではなく(←ここで、チコちゃんに「ボーッとと生きてんじゃねーよ!」と怒ってもらう)、「リーダーの役割を誤解しているから!」(ドドン♫)となるでしょう。
現代に求められる「リーダー像」は、「変革型(transformational leadership)」と言われます。「理念的・理想的な態度や行動、インスピレーションの喚起、知的刺激、メンバー一人ひとりの欲求を考えてその育成と欲求への配慮をおこなう。……外界に向ける支店の注視をより促して思考や理念の新しい考え方を与え、明確な将来の目標とビジョンを提示して自らもリスクに向かう。このようなリーダーは、組織・集団の目的を明確化し、それを達成する具体的プランを提示して率先する。」(本書第3章より)
これに対する「交換型(transactional leadership)」では、「成果にフィードバックし、失敗したときの態度を受け身で見守り、個人利益の最大化をおこなう。リーダーと部下の間の相互交換を重視し、部下の責任を明確にし、集団にとって正当なことを促し、それに反した場合の統制・管理をすることでフォロワーに対して報酬や昇進を与えることで満足させる」と言います。(同上)
さらに「放任型(laissez-faire)」も合わせて、リーダーシップを積極的に発揮しない型として、男女の違いに関する過去の論文のメタ解析を行うと、女性マネージャーの方が実は変革型の特徴を優位に示し、男性マネージャーでは逸脱行動の管理や放任的な指標が優位であったといいます。
なんとなく見渡すと、男性リーダーに「交換型」や「放任型」が多いような気が確かにしますね・・・。もとい。日本では管理職に男性が圧倒的に多く、その多くが「交換型」や「放任型」であるような印象を持ちます。
本書の中では「リーダー」という言葉も、日本では女性が手を挙げにくいイメージがあるという点についても触れられていました。むしろ「マネージャー」であれば、その心理的バリアが下がるのかもしれません。
もちろん、日本で女性管理職が少ないのは、育児や家事の負担が圧倒的に女性側に偏っていることが、そもそもの背景にありますが、「女性は管理職に向いていない」という方がおられたら、令和の時代に求められるリーダーは「変革型」であり、むしろ女性の方がその特質に当てはまるということを伝えたいと思います。
停滞する日本の現状を変えるには、まず「女性管理職を3割に!」と言いたいですね。
なぜ3割かというと、例えば簡単な事例として、何かの組織の「理事」のポジションが10あったとして、女性がその一人だと、その女性が「全女性」を代表するような意見を求められてしまうことがよくあるのです。それは違う。2名だと異なる意見がありえ、3名だと違いと共通性が見えると思います。3割くらいの人数がいれば、マイノリティとしても排除されないパワーとなりますね。
本書は共同参画関係の組織には必ず揃えておいた方が良い良書であり、若い方を育てる立場にある方には、男女問わず、ぜひ読んで頂きたいと思います。