8月1日午後から3日午前の間、第4回目となる
「個性」創発脳という新学術領域の領域会議を香川県琴平にて開催しました。準備から運営にあたり、世話人をお務め頂いた徳島文理大学の冨永貴志先生および関係の皆様、たいへんお世話になり有難うございました。ちなみに、領域のロゴマークも冨永先生のデザイン。人文社会系(ピンク)、生物系(イエロー)、理工系(ブルー)の研究者が結集していることを象徴しています。
新学術領域というのは、文部科学省の科学研究費のうち、研究者のグループにより推進する枠組みとなっており、当領域「多様な<個性>を創発する脳システムの統合的理解」では、
10名の計画研究代表者(プラス、分担研究者)と
33名の公募研究代表者から組織されています。研究室からは学生さんも含めて複数の研究者が参加するので、領域会議は毎回、総勢で100名前後の参加者となります。さらに、アドバイザリーボードの先生(今回は鍋島陽一先生)、文部科学省の担当学術調査官の先生方にもご参加頂きました。また、同じ年(平成28年度)に開始された別の領域
「生物移動情報学」の領域代表である橋本浩一先生@東北大学情報科学研究科には、特別講演の演者としてご参加頂きました。
領域の研究がパワーアップしたことを実感し、領域代表としてたいへん心強く、また一研究室主宰者として成果とりまとめ論文化に向けて急がねばと思いました。唯一、心残りは、金比羅山にお参りできなかったこと。朝5時起きで会議の前に登った方もいたようですが、暑さで断念……。
第1回目の領域会議は、最初の立ち上げのときで、計画研究代表者とその分担研究者を中心として半分弱の人数で開催されました。採択が正式に通知されるのが夏なので、12月に開催した領域会議には、その高揚感が持ち込まれていました。第1期の公募研究代表者も含めて2年度目の夏に開催された第2回目の領域会議では、それぞれが「個性」とはどのように捉えるのか、についての発表を夜の交流会時に披露して、侃々諤々の議論となりました。昨年行われた第3回目では、秋に「中間評価」を控えていた緊張感があったと思います。今回は公募研究代表者の方の入れ替わりがありましたので、新規参入の方にはやはり「個性」についての意見を述べてもらいました。
「個性」というのは、日常的に使う言葉でもあり、なんとなくわかっているつもりでも、サイエンスとして扱おうとすると難しいという側面があります。個人的な面で言えば、「群間」の「平均値」の比較で語るスタンダードな生命科学に対するアンチテーゼとして立ち上げた本領の3年間の研究活動の間に、マウスをモデルとして遺伝的なプログラムと、その発動に影響するその他のファクターの影響について、どのような解析を行えば「個性」を数理科学的に捉えられるか、という見通しが立ったと感じています。
本領域は人文社会系、生物系、理工系の研究者から構成される、非常にヘテロな研究グループです。領域会議は一種のサロン的な側面もあり、日頃、あまり聞くことのできない話をお互いに聴くこととなるので、ヘビーではありますが刺激的です。いよいよ来年度は最終年度となり、第2回目の国際シンポジウムも開催予定です。
次年度より、このようなグループ研究の枠組みがやや変わることになりますが、学問の端と端が重なり合うところに新たな学問が生まれることを支える仕組みは重要だと思っています。
【関連リンクまとめ】
領域立ち上げ時に受けたネイチャーダイジェストの記事:
自閉スペクトラム症研究から「個性」の探求へ (Nature ダイジェスト Vol. 14 No. 2 | doi : 10.1038/ndigest.2017.170220)