昨日、自分のタイムラインにこんな記事が流れてきた。
中身を読んで見ると、引用されているのは2015年と2011年の同じグループの論文だったので、念の為、最近もポジティブに捉えられているのかPubMedで検索してみたところ、直近の9月20日付けでメタ解析論文が出ていた。
上記とは独立の単発の報告も。
An Exercise Program Designed for Children with Attention Deficit/Hyperactivity Disorder for Use in School Physical Education: Feasibility and Utility. Healthcare (Basel), 2019 Sep 4;7(3). pii: E102.
doi: 10.3390/healthcare7030102.
運動がADHDの介入に役立つ可能性がある根拠として、脳内に神経伝達物質が放出されるからではないか、という説が上記Gigazineでは挙げられていたが、我々の過去の研究結果を鑑みると、神経新生を介している可能性もありえるのではないかと気づいた。
マウスを用いた実験:
臨界期に細胞増殖阻害剤(MAM)投与により神経新生を阻害すると、プレパルス抑制(PPI)低下(感覚運動ゲート機構の異常、注意欠陥と解釈)、多動、不安の増強が生じるというマウスの実験系において、「環境強化 enriched environment (EE)」により運動させると、海馬における神経新生が回復し、これらの症状が改善する。
このとき興味深かったのは、臨界期を過ぎてEEを行った場合には、多動は減ったが、PPIの異常と不安は回復しなかった。
実はこのモデルを立てたときには、統合失調症の発症機序のようなことを考えていたのだが(その文脈でNHKニュースに取り上げられました)、上記のようなADHD児に対する運動の効果を合わせて今、解釈し直してみると、ADHDのモデルとして考えた方がより適切なのかもしれない。
ちなみに、多数の論文を検索することにより、神経新生低下と感覚運動ゲート機構の異常の相関性について認められたので、以下の分担執筆の総説で論じている。
再度、総説を書き直しても良いのかもしれない。研究は自分だけで行っているものではなく、自分が出したデータも解釈し直せるのが面白い。だから研究は止められない。