ADHD診断の難しさと抗うつ剤効果のメタ解析

台風の被害状況が相次いで報告されています。災害は人々の心に傷を付けますね……。早期の回復を祈るばかりです。

昨日の投稿に続いて、AsCNP/JSNP/JSCNP合同年会で学んだことの備忘録。

スポンサードシンポジウムの一つ「ADHDの適性診断」に聴衆として参加し、成人期ADHD診断の難しさについて意識を新たにしました。ADHD(注意欠陥・多動性障害)は多動性、衝動性、不注意を特徴とする子どもの神経発達症として知られていますが、近年、「大人の発達障害」についての認知が広まるにつれ、大人になってから「自分はADHDかも?」と思われる方も増えています。

でも、例えば若年発症の認知症の場合でも、忘れっぽかったり動き回ったりする症状が見られるので、本人の意識としては「子どもの頃から不注意だった」として記憶が書き換わったりもし、認知症としての診断が遅れる場合がありえるのですね。

あるいは、子どもの場合でも、「ぼうっとしている」のでADHDと思われていたものの、実は脳波の検査などで「てんかん」の診断となる場合もあるとのこと。

その他、甲状腺機能障害、免疫機能不全、口唇口蓋裂を伴うような場合には、普通のADHDではなく、例えば22q11.2のゲノム領域の欠損が原因であるということも。


抗うつ剤のメタ解析の話はランチョンセミナーとして聴いたのですが、3万本もの臨床論文から、基準に見合うものを500本ほど選び、21種の抗うつ剤のうち、どれの効果が高いのかを明らかにしたという内容。京都大学の古川壽亮先生の国際共同研究です。
ADHD診断の難しさと抗うつ剤効果のメタ解析_d0028322_23063197.png



上記の元となった論文:

ちなみに2018年のランセットの論文は最初523本のメタ解析として投稿したところ、査読者から1本の論文が基準に合わないというコメントが付いて、522本にして再解析したという裏話も。「5ページの論文ですが、Apppendixが200ページ分くらいあります(笑)」とおっしゃっていました。

今日は、ラグビーW杯で日本がスコットランドに勝利して、決勝進出となった日ですが、研究業界もタフさが必要とされますね。

ヒトそのものを対象とした研究では、こういうメタ解析がとても大事ですが、同じようにマウスの基礎研究データも見直すのが良いのではないかと思います。


by osumi1128 | 2019-10-13 18:31 | サイエンス

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