日本では即位礼正殿の儀が行われている頃と思いますが、ただいま地球の反対側のオーストラリアはメルボルンにて国際会議に参加中。Developmental Origin of Health and Disease (DOHaD)についての研究者が世界中から集まっています。
この国際会議は2年ごとに行われていて今回で11回目ということなので、比較的新しい分野です。参加者は産婦人科医、小児科医だけでなく、疫学、遺伝学、分子生物学、栄養学、心理学、教育学等の研究者や市民の活動家、行政の施策に関わる方まで、実に多岐にわたります。それは、「健康状態や病気の原因が発生発達期まで遡れる」ということの理解を目指すだけでなく、その「実践」により、人々の健康を増進し、地域を、世界を良いものにするという活動にもつながっているからです。
実際、DOHaDは国連のSDGs目標の1〜6「貧困」「飢餓」「健康と福祉」「ジェンダー平等」「安全な水」のすべてに関係します。
テーマ的には遺伝子多型だけでなく、エピジェネティクスのセッションがあったり、父側の影響についても日本の学会よりもしっかり扱われていたので、我々の研究方向とも合致しているなと思いました。
ショッキングな内容として、妊娠雌ラットに与えたストレスの影響が、その次の世代でストレスをかけなくても、孫や曾孫の世代まで続くという発表がありました。折しも、
日本の女性の幸福度が子どもの有り無しに大きく依存しているという記事を読んだところでした。その記事によれば、幸福度は「子どもがいない専業主婦>子どもがいない働く妻>子どもがいる専業主婦>子どもがいる働く妻」の順になるというのです。子育ての負担が女性にかかりすぎないようにすることは、さらに将来にわたって重要なことであると思われます。
来年、仙台で学会を主催するということもあり、運営の仕方についても興味がありました。例えばこの学会では当日参加を認めていないので、受付でお金のやりとりをする必要も無いので人数は2〜3名のみ。ネームタグは事前送付無しでその場でタブレット端末から印刷。抄録集の印刷は無く、アプリのみ。一方、エコを考えて(抄録集の印刷をしないのもその一環)、マイボトルを配ったり、コングレスバッグも化繊ではなく綿。
メルボルン全体がアートを大事にする街なので、コングレスバッグのデザインはアーティストによるものであったり、オープニングセレモニーの演出もアボリジニの方の演奏だったり、会場にインスタレーション的な展示があったり。
あと、シンポジウムの構成が、招待講演者に若手数名を加えてあるので、若手のみの口頭発表ではないといういうのは学ぶべき点があると思いました。他にも、Young Trainees' Sessionが種々用意されていて、キャリアパスを考えているのも良いですね。
ちなみに、この学会で一番びっくりしたのは女性比率。参加者の6割が女性という学会は初めてでした。その理由は上記のような学際融合分野であることによるのでしょう。実際、5人のシンポジストのうち男性が1名のみ、座長も女性というようなセッションもありました。
【参考拙ブログ】
【参考記事】