日本には「死亡叙位」という制度があります。父は長く水産庁に勤めていたこともあり、日本鯨類研究所の理事長を退職した後、平成14年に勲四等瑞宝章も頂いていましたが、亡くなってから叙位されることになりました。粛々と進めて下さった関係の皆様に感謝申し上げます。
位記を頂きに上がる母に付き添って、霞が関の農林水産省の建物を初めて訪れました。

どちらの官庁の建物でもセキュリティチェックは厳しくなっていますが、外のガードマンの方に「父の叙位で……」と伝えるだけで、「伺っています」とすぐに通して頂きました。受付けにも連絡は通っていましたが、さらに職員の方がロビーでお待ち下さっていました。ロビーではいろいろな方々が待ち合わせをしていて、活気がありました。
省庁統合になって、文部省と融合した科学技術庁の長官はなくなりましたが、農林水産省の中には林野庁と水産庁が「外局」という形で残っているのですね。位記を渡して下さったのは水産庁の長官でした。
黒々とした墨で「従四位」という位階と総理大臣の名前等が記され、天皇御璽が押されていました。
その後、長官室で参事官から課長補佐の方まで数名の捕鯨関係の方々と懇談。父に世話になったとお話くださいました。
母はその後、日本鯨類研究所の方と「偲ぶ会」の会場下見に、私は仙台に戻りました。
生物学的にも死はプロセスであり、個体としての死から、細胞レベルの死まで種々の事象が進行します。一人の人間の死にも、一つひとつのプロセスがあり、父の場合もまだ現在進行形です。