責任が不明確な日本語

3月初旬に母から「マスクが買えない」との連絡あり。某Amazonで探して50枚で5000円以上のマスクを送って、「これで当分大丈夫。安心した」というメールを受け取って一安心……と思っていたら、3月の連休前に「買ってもらったマスクの箱が見つからない」との悲報が届き、再度、某Amazonで探して、50枚で6000円以上の別の品(選択肢が限られていました)を送りました。

母:どこにいっちゃったのかしら? どうしても見つからないの・・・
私:仕舞いそうなところを探してみたら?
母:探したけど無いのよ・・・
私:きっと忘れた頃に見つかるでしょうから、とりあえず新しいマスクでしのいで下さい。

そして連休前、母からのメールに「マスクが出てきた」とありました。
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母:洗面所の下の物入れを整理していたらマスクがあったの。
私:それは何よりでした。
母:これで当分、大丈夫ね。

……「マスクが出てきた」というのは、とても日本語らしい表現ですね。まるでマスクがノコノコ歩いて出てくるような感じです。

英語なら「I found the mask!」でしょう。

……と思って、最近、Google翻訳よりも性能が良い、というDeepLという自動翻訳にかけてみると……。
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うーん、これは直訳ですね(苦笑)。DeepLさん、もう少し深く学習して下さい。

同様の日本語の表現としては、「ガラスが割れた(The glass was broken)」や、「骨が折れた(比喩的な意味ではなく骨折した)I broke my bone」なども似た系統のように思います。(同様にDeepLさんの学習が足りないように感じます。きっとあまり学習できるテキストとして出回っていないのでしょう。ちなみに比喩的な意味の「骨が折れた」をDeepLにかけると以下になります。DeepLさん、別の訳語として「It's hard work」などが挙げられるように、もっと学習して下さい。)
責任が不明確な日本語_d0028322_10044757.png
「マスクが出てきた」という表現は、まるで「自分は何もしていないのに、勝手にマスクが消えたり出てきたりする」ような認識を感じさせます。日本語にそういう表現が多いのは、自分の責任を曖昧にすることを許容する文化なのかなと思います。主語をはっきりさせないのも同じ根っこなのでしょう。


by osumi1128 | 2020-05-10 10:07 | 雑感

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