今週から東北大学はBCPレベルが3に下がったところ。まだ休館中附属図書館での
研究者への書籍貸出しサービスや、
学生への貸出し郵送も始まったが、引き続き感染拡大防止に努めるために、フィジカルディスタンスは大事。
いわゆる「#ステイホーム(おうちですごそう)」という自粛ムードは人々の巣ごもり生活を促しているのだが、ふと、この状態は、あぁ、蛹(さなぎ)なのだ、と思った。
完全変態を起こす昆虫では、幼虫から蛹の状態を経て成虫となる。翅のまったく無い幼虫から、一対だったり二対だったりの翅を持つ成虫へと、比較的短い間に変化するのは驚異的だ。
ショウジョウバエという実験動物も完全変態をとり、蛹の中で生じる変態のドラマは、様々な研究対象にもなっている。脳や脚や触覚なども、幼虫には無かった成虫の組織が蛹の中で作られる。
東北大学大学院生命科学研究科の倉永恵里奈教授の研究室も、形態形成メカニズムの理解のためにショウジョウバエの変態を研究している。たとえば、4月にDevelopment誌に発表された論文をもとにしたプレスリリースでは、蛹の中で生じる細胞死が変態のスピードの鍵となっていることを示している。

図は、プレスリリースより拝借。幼虫細胞からなる表皮組織(緑)が成虫細胞(マゼンタ)で入れ替わることを示しているのだが、やや専門的ながらここで重要なポイントは、細胞同士がシート状の「上皮」という一続きの構造を保ちながら、幼虫の細胞が死につつ成虫の細胞に徐々に置き換わっていくという点にある。
COVID-19対応のためにBCPレベルを3に保ちながら、今、大学の中では大きな改革を進めつつある。例えば、SARS-CoV-2が来るまで、事務職員の方が在宅でテレワークをできる日が来るなんて、いつのことだろうと思っていたら、いきなりそういう状況になった。なんだ、やればできるじゃない。
テレワークで仕事を進めようとすると困難になるのは、紙の提出物を受け取る窓口対応の業務。これも今ならネットでできるはず、ということで対応策を作りつつあるとのこと。
さらに各種の「紙」には印鑑が必要。印鑑で承認を取る我が国ならではの仕組みで、まぁ、手書きのサイン(花押など)の時代から、大量に証文など作るために簡素化されたのが印鑑ではあるのだが、それももう、インターネットとディジタルな時代にはそぐわないものとなった。
どれもこれも、日本が30年遅れた部分である。このタイミングでやらなかったら、次、いつできるのかわからない……。
という訳で、今は「蛹の時代」なのだと思う。うまく変態して、美しい蝶となって羽ばたけるかどうかは、蛹の中での変革にかかっている。