Veronicaのお宅

エジンバラの話の続きです。

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今回ホストになって頂いたVeronica van HeyningenはMedical Research CouncilのHuman Genetics Unitの方で、マウスとヒトの遺伝学を駆使した仕事をされている著名な方だ。
「ポスドク時代からずっと同じところで働いていて、気が付いたらもう30年だわ」と言っておられた。
ご主人は生化学がご専門だが、今ではエジンバラ大学の副学長の立場になられている。
エジンバラのお宅に泊めて頂くのは3度目になるが、ヴィクトリア朝時代、より正確には1840年代の建物で、4人目の所有者になるという(ちゃんと台帳があって登録されている)。
同じ通りにはなんと発生学者のWaddingtonが住んでいたらしい。
2階建てでFront gardenとBackyardがあり、1階にはキッチン、ダイニングルーム、書斎、sitting room(日本でいうところのリビングルーム)とゲスト用のシャワー&トイレ、2階にはご夫婦の寝室の他に、もう独立したお子さんが使っていた部屋が2つとバスルーム、あとは広い地下室が食料品や普段使わないさまざまなものの置き場になっている。
私はいつもお嬢さんのElenaが使っていらしたお部屋に泊めて頂くのだが、天井が3メーター以上あり、広さは40平米くらいだろうか、普通のホテルの部屋よりも広いくらい。
片側の壁面には大きな窓があってbackyardの緑の芝生が見える。
その両側には作り付けで棚板を渡しただけの本棚があって、お嬢さんが高校から大学の間に読んだものだろうか、さまざまな本がずらっと並んでいる。
床は昔ながらの木張りで、ちょっとギシギシ鳴るのが、古いお家の証拠。
やはり作り付けになっているドレッサーのところに小さな洗面台もあって、ゲストには有り難い。
家の中にはかなり古いものからモダンなものまでアートに溢れているだけでなく、どこもかしこも綺麗に片づいていて、ああ、こういう家に住みたいものだといつも思う。

Veronicaは元々ハンガリーの出身で、着いた日の夕食のメニューは、ポークのハンガリア風ソテー(パプリカを使う)に付け合わせがポテトと空豆を茹でた物、Thatユs allで、お皿1枚で事足りる。
2 course dinnerになるとゴージャス版で、レストランでの食事やちょっと正式な招待ディナーだが、普段はこんなものか、さらに簡単らしい。
日本に限らず東洋系の食事は品数が多いことが御馳走の印という伝統があって、家に人を招く場合にもつい気張って何品も用意することが多いが、アメリカ人やイギリス人のスタンダードはだいたいこんなものだ。

朝はシリアル、ジュース、コーヒー、Simonはさらにトーストというパターン。
ジュースがブラッドオレンジで「甘みが少なくて最近のお気に入り」とのこと。

Work & life balanceを取るのには、ハードウエアで解決できることもあるのではないかと思う。
例えば、大きなdish washerがあれば、食事の後片付けは一気に楽になるし、誰でもできる。
汚れたお皿を放り込んで洗剤を入れてスイッチをオンにすれば、見た目にもかなり片付いたことになって、精神衛生上好ましい。
うちにもビルトインの食器洗い機があるが、容量はこちらの半分程度だろうか。
それでも普段から家でのディナーパーティーまで手伝ってもらえるのが有り難い(私は愛情を込めて「小人さん」と呼んでいる)。
日本に大型のdish washerが普及しないのは、家の大きさの制限によるところが大きいだろうし、それは元々は平地が少ないという問題に起因するのだろう。

もう一つの問題はメンタルなもので、例えばhouse cleaningの人に来てもらうことに対する抵抗感のようなものかもしれない。
「Norikoはhouse cleaningはどうしてるの?」と聞かれて、「年に2回くらいは人を頼んでいる」と答えたが、Veronicaはかれこれ30年近く週に1、2回、家の掃除に来てもらっているとのことだった。
これだけ大きなお家になると、掃除機をかけるだけでも2時間くらいかかりそうだから当然だろう。
ウサギ小屋の我が家は掃除機だけなら30分で事足りるのだが、でも毎週、あるいは月に1度でもハウスクリーニングに来て頂いたら快適だろうと思いつつ、むしろプライバシーの問題が気になってしまう。
お金の問題でもある訳だが、要は人生のプライオリティーをどこに置くかである。
例えばVeronicaのところはエンゲル係数はかなり高いし、本や芸術や旅行にかけるお金も相当なものと見なせるが、衣服に関しては、粗末ではないが、ものすごくお金をかけている訳ではない。
家はヴィクトリア朝で大きいが、プラズマテレビがあるわけではないし、ウェッジウッドのお皿やバカラのグラスで食事をする訳でもなく、車もfancyではない。
でも、ハウスクリーニングの方に1回当たり20ポンド払うのは、仕事もしつつ快適な家庭生活をするのに正当な出資なのである。

ときどき親しい友人を自宅に招いて夕食を共にするというようなwork & life balanceが日本ではなかなか浸透しにくいのは、住宅事情やら、ハウスクリーニング事情やら、はてまた訪問先から帰るのが遠すぎるなどの事情にもよるだろう。
簡単には解決しない問題である。

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24日のセミナーはVeronicaのラボの方が中心でこじんまりとしたものだったが、その分細かいディスカッションができた。
自分の意図した質問が出てくると、うまく聴衆をリードできたのだなと思って安心する。

ところで今回、ヨークでの学会の間のネット環境がプアだったので、こちらのオフィスでインターネットにつなげてほっとした。
セキュリティが厳しく、自動でアドレスが割り振られるのではないので、自分のコンピュータのIDをacceptしてもらえるように管理者にお願いした。
仙台の秘書さんにメールは開いてもらい、半分ほどにもなるスパムメールは捨てて、何か大事なメールがあったら携帯の方に連絡して下さいとお願いしてはいるが、処理できるものは処理してしまわないと、出張から戻ってからが悲惨である。
こういう状況が良いのか悪いのか・・・
by osumi1128 | 2006-03-27 15:51

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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