解剖男

しばらく前からまた翻訳の仕事を始めたので、家で本を読む時間がなくなっている。
ようやくこの前の出張の行き帰りに、『解剖男』(遠藤秀紀著、講談社現代新書、2006年新刊)を読んだ。
著者(このブログでもすでにご紹介した『パンダの死体はよみがえる』の24時間戦う「遺体科学者」遠藤さんだ)が送って下さったのだが、その直後に他の人に貸してしまって、読めないでいたということもある。

相変わらず小気味の良いタッチで、いろいろな動物の遺体解剖のエピソードが書かれている。
冒頭は「乗車率200%の山手線の中でバイカルアザラシの目玉の解剖をしている」という書き出しだったので、「一体ナニ? ついにそこまでイってしまったの!?」と心配したら、それは遠藤さんの頭の中でのことだったので一安心。
なにせ、ところどころ標本の前やら解剖中やらの、とっても嬉しそーな遠藤さんの写真もあるので、周囲の目などものともせず、電車の中でも解剖するようになったのか、でもピンセットはアブナイだろうなあ・・・と思ってしまった。

ちなみに、私は大学生の頃ものすごく編み物に凝っていた時期があり、朝は座れないので無理だが、夜、家庭教師の帰りの空いた電車では、寸暇を惜しんで編み棒を取り出し、黙々と編んでいた。
まあ、集中力というよりは貧乏性かもしれない。

さて本の中に、東大医学部解剖の教授であられた小川鼎三先生が1959年から「日本雪男学術探検隊」を率いられて、ヒマラヤへ調査に向かったというエピソードが出てくる。
「ヒマラヤに雪男がいる」という噂というか伝説というか、それが本当かを確かめに行かれたというのだ。
で、当然、その証拠はなかなか見つからず、探検隊は急遽ターゲットを変えてインドのカワイルカを調査することになり、それは素晴らしい成果を挙げたという。
この話は、鯨類が陸上のどんな種に近いか、というメインストーリーの中に出てくるのだが、私は「日本雪男<学術>探検隊」が組まれたことや、それにお金が出たということにいたく感動した。

それで思い出したのだが、今月12日から石巻で調査捕鯨が始まった。
財団法人日本鯨類研究所が主体となり、宮城県水産研究開発センターと独立行政法人遠洋水産研究所(静岡市清水ー知らない間に清水市は合併されていた!)の協力のもとに、三陸沖のミンククジラの生態調査等を行う。
5月末までに60頭を捕獲の予定。
確か数日前に、初めての捕獲があったというニュースを車のラジオで聞いた気がする。
仙台では鯨の赤身のお刺身が食べられる店があるが、これがことのほか美味である。
ちょうど、馬刺しのような味わいなので、やはりおろし生姜やニンニクの薄切りを薬味として頂く。
調査捕鯨の間はしばらく安定供給されることだろう。
by osumi1128 | 2006-04-21 02:23 | 書評

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