高等教育をどうするか?
2006年 05月 12日
本日は高校の同級生がいる山梨大学医学部にて講演、明日は東京で振興調整費の人材育成プログラムREDEEMの出張講義、明後日はいよいよ統合脳X未来館の公開シンポジウムということで出張が続く。
いつも思うのだが、先の予定を入れるときに、「このくらいはこなせるかな」と思ってしまうが、実はその間際になると突発的にいろいろな無理難題が降ってきて、オーバーワークになってしまう。
今回も、プレゼン準備自体はやや前倒しにしていたのでなんとかなると思うのだが、良い授業やセミナー等をするにはこちらの気合いが必要。
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さてサイエンティストブログの大家のお一人「5号館のつぶやき」さんの最近のエントリー研究をしない大学に存在価値はあるのかにTBしつつ、再度、大学や大学院のあり方についてのウェブ議論をしたいと思います。
日付上5月9日のエントリー大学院は何をするところか?について、たくさんのコメントを有難うございました。
京大のMさんという脳科学者が神経科学者SNS(当面の愛称「ブレインハッカーズ」)というサイトの方にコメントを下さったので、許可を得てこちらに転載致します。
こちらのほうにコメントを書かせていただきます。
「博士への進学率を%で表すと、4.45%(1980年)が13.98%(2004年)」に増え、「大学院生がこの四半世紀の間に3倍に増えた」とのことです。これについて、仙台通信さんは、「システムを作るより前に定員だけ増やしたことが大きく問題だ」とご指摘されています。受け皿を用意する前に、増やしてしまったわけですね。これは全くその通りかと思います。増やされてしまったほうの方々にとってみれば、この問題に気づかずに博士課程に進んでしまい、現在、どうするかということに困ってらっしゃる方々が多いのではないでしょうか。個々の方々の人生に影響することですから、まずは受け皿のシステムを用意してから、あるいは受け皿のシステムがワークするかどうかを調査してから導入したほうが良かったのではないかと思います(というか、きちんと調査すれば簡単にはワークしないことがわかったのではと思いますが)。
「重点化の「波」に乗り遅れたくないと思った大学関係の方達がいた訳なのですが、そういう方々の多くは「自分の大学にとっての利益」を優先され、国全体としてどういうことになるか、という意識に欠けていたのではないか」とも仙台通信さんはおっしゃっています。これにつきましては、個々の大学、個々の個人が、国全体のことを考えるような社会になって欲しいなあ、と希望としては私も思います。ただ、施策の方向性、ということを考えてみますとあるシステムの下では自己(個人や法人や特定のグループなど)の利益を最大にしようと動く、ということを前提にシステムを作る必要があるかと思います。この意味では、そういったシステムが上から降って来た場合には、各大学が自分の大学にとっての利益を優先してしまったのは、仕方のないこと、というか必然のことであったのではないでしょうか。
ともあれ、そういう事が起こってしまって現在にいたりますので、この状況をなんとかよりよいものにしたいですね。ここでその対策案まで書かせていただくのはちょっと場違いなような気もいたしますが、簡単に。
1.(企業にお願いするだけでなく)増えてしまった人たちの受け皿をなんとかつくる。PIポジションを増やす、ということはまず必要です。それと同時に、教育トラック(教育専門)や、リサーチトラック、技術員トラックを作り充実させることが重要でしょう。
2.大学院博士課程の定員を激減させ(もとに戻すくらい)、修士課程の定員を増やす。博士課程は狭き門にします。修士課程でしたら、まだ企業はとってくれます。博士課程の数を減らすのは一定期間(10年とか15年)、現在の問題が解消するまででよいかもしれません。研究能力がありそうかどうかは、修士で2年間やってみればある程度の予測はつくのでは、と思います。「末は博士か大臣か」のイメージにより近くしたほうがいい、という意見です。
また詳細はどこかで書こうと思いますが、とりあえず。
いかがでしょうかね。
9日のエントリーへのコメントの最後に「匿名ポスドクさん」からも長いコメントを頂きましたので、そちらも合わせてご覧下さい。
私はMさんのご提案の「教育トラック(教育専門)や、リサーチトラック、技術員トラック」というものをどのように構築するかに興味を持っており、とくに「技術員トラック」に相当するシステムについては人材委員会等でも発言しました(ただし、技術員トラックというタームは使わなかったのですが)。
現行の「テニュアトラック」は上記の中では主として「リサーチトラック」に相当すると思いますが、「教育トラック」をきちんと作ることは、5号館さんの言われる「どのようにして教養教育をするか」にも繋がりますし、匿名ポスドクさんの言われる「大学院生のバックグラウンドの狭さ」の解消にも間接的に関係しそうに思います。
では、本日から巡業に出て参ります。