Shaken baby syndrome補足その2

“二児の親”さんから再度コメントを頂きましたので、別エントリーを立てさせて頂きます。
他にもstさんとCRNスタッフという子供研究所事務局の方からsuggestiveなサイトを教えて頂きました。有難うございます。

私も“揺さぶられっ子症候群”というキーワードで検索をかけてみましたが、そちらで挙がってくるのはやや医療という面からは専門性が低いように思われました。
英語のサイトですと例えば米国国立衛生研究所の傘下のNational Institute of Neurological Disorders and Strokeというようなサイトが専門性が高く信頼できそうに思いました。

そこから得られた情報から判断しますと、英語のshaken baby syndromeと日本語の“揺さぶられっ子症候群”という言葉の使われ方には、やや乖離する部分があるように思いました。
日本語では「高い高いなどをして赤ちゃんをあやすときに、過度にならないように気を付けないと“揺さぶられっ子症候群”になって視覚や脳機能に影響があります」という扱われ方であるのに対し、英語では"Shaken baby syndrome is a type of inflicted traumatic brain injury that happens when a baby is violently shaken."と書かれています。
「暴力的に揺さぶったときに」起こる症状という書かれ方は、「虐待」を連想させます。
これは、日本では親が怒ったときに子供を「叩く、殴る、蹴る」のに対し、欧米では「激しく揺さぶる」ことが多いという習慣の差もあるようです。

stさんが挙げて下さった日本語のサイトは、私がネットサーチしたものよりも専門的でしたので、そちらを掲載しておきます。
こちらには、虐待が疑われる場合の鑑別やshaken baby syndromeによる頭蓋内出血のMRI画像も載っています。
別のサイトでは“「あやす」といったレベルの揺すりで高度な 硬膜下血腫が生じるとは考えられてはいない。”と書かれていました。
ただしこちらでは虐待とは判断されなかった症例もあるとのことでしたが、画像は載っていません。

私は小児科医でも小児放射線医でもありませんので、「“揺さぶられっ子症候群”の何%が虐待なのか?」という問いに対しては、知識や経験としての答えは持っていません。
ですが、小児神経学会におけるA先生のご講演と、メディカル系バックグラウンドを持った上でのネットサーチからは、まず、上記のように言葉の使われ方の問題があるということと、通常の「あやす」レベルの揺すりで高度な 硬膜下血腫が生じたり、場合によっては失明や精神遅滞に至ることはないのではないかと判断します。

まず、来院時の臨床症状として、意識障害や痙攣などがあり、小児放射線医がCTやMRIの画像から得る所見として、重篤な血腫や頭蓋骨折が見られ、さらに、肋骨等の骨折や複数の皮膚の内出血が認められる、そもそも、症状が現れてからすぐ受診していない、既往の説明に不正確な点や不一致がある、などの複合的な判断により、虐待が「疑われる」場合がある、ということだと思います。
(虐待の場合には保護者から正確な情報を得ることは、まず不可能でしょう)

“二児の親”さんが“子育てに日々悪戦苦闘する親”として頑張っておられることには心から敬意を表します。
おそらく“二児の親”さんのお子さんがshaken baby syndromeと診断されるようなことはないでしょう。

ただし、事故等の理由ではなく、めちゃめちゃになった脳の画像を見た場合には、脳の発生発達を研究する者としてはやはり、それに至る行為を想像し「許せない」と思います。
by osumi1128 | 2006-06-09 00:17

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