歩く

昨日、というよりは実は一昨日、朝、家からラボまで歩いてしまった。
時間にすると50分くらいで、歩けない距離ではないのだが、普通の平日に歩くなんてことは初めて。
そもそもは、「今日は車は使わないので、とりあえずラボの方向に向かって歩いて、どこかでタクシーを拾おう」と思っていたのだが、本部キャンパスを過ぎたあたりのところで、三越の知り合いのオジサンに会ってしまった。
この方は「原則毎日、八木山から職場まで歩いています」という方で(ローカルですみません、ほぼ40分くらいなのだと思います)、何度かそのお話を聞いていたのだが、信号待ちをしている際にばったり会ってしまったのだ。
で、その地点から三越仙台店まで歩き、そこまで歩くとラボまでのほぼ半分をやや過ぎたくらいになるので、なんとなく、じゃあもう少し歩いてみようかという気持ちでになり、だんだん「今からタクシーに乗るのは、ちょっと悪いかも」と思い、総計5キロ弱を完歩。

こんな気になったのは、梅雨には入ったけど雨は降っていない、という暑くもなく寒くもなく、という陽気のせいでもあっただろう。
定禅寺通りは欅の葉が茂り、丁度良い日陰になっている。
仙台のメインストリートは歩道が広いのも歩行者にとって有り難い。
安心安全な雰囲気もある。

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さて、来週は京都で国際生化学分子生物学会議IUBMBが開催される。
この規模の国際会議になると、ややお祭り的なニュアンスが多くなる。
例えば、Opening Ceremonyに皇太子ご臨席とのことで、セキュリティーが厳しいらしい。
この間発生生物学会があったばかりで、しかも日本の分子生物学会は昨年12月に年会が開かれたということもあって、演題を出す方としては結構大変なのではあるが、「是非多くのご参加を!」というキャンペーンする側に回っている。

私自身の義務としては、初日のPlenary Lectureの座長と、21日夕方の男女共同参画企画での発表である。
座長はまあいいとして、サイエンス以外のネタで英語で話すというのは、初めての経験になる。
いくつになっても新しい体験をさせてもらうのは、「スピード・変化・自由」というキーワードを持つ射手座の生まれとしては本望であるが、負担であることは事実。
しかも、「アメリカとカナダからの参加者もいるので、今年度の文科省の女性研究者支援の取り組みについても披露しよう」と思いついたのはいいのだが、文科省ホームページでダウンロードできる書類の英語版を作ろうと思って、非常に大変な作業であることが分かった。
例えば、ある支援策は文科省の中の「科学技術・学術政策課」の扱いであったとして、この課の英文名称は何というのか?とHPを探しても出ていない。
また、英語と日本語での問題意識の違いというか、逐語訳しても意味をなさないだろうということがすぐ理解できた。
そもそも、この分野のボキャブラリーが貧困であるのだが、育児と研究の「両立支援」をどう訳すか・・・?
言葉が意識を縛っているということを痛感した。

幸いなことに、文科省の各課の英文名称は、とある局長の秘書さんにメールで問い合わせて、すぐに教えて頂けた。深謝。

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夜に、数学科のK先生と、某メディアのYさんと、ずっと行ってみたいと思っていたCというワインバーに行った。
議論になったポインはいくつかあったが、例えば「総長にはどんな方が相応しいか」
O:「総長になっても自分の研究室を支配するっていうのは、公平性に欠けるんじゃないかなあ?」という意見。
K:「3年もの間、研究の第一線から退いたら戻れないじゃない」
O:「だから、総長になるような方は、もうその後研究を続けるなんてことは考えるべきではないのでは?」
K:「研究マインドを持たない方には、評価なんてされたくないなあ。大学は営利企業じゃないんだから」

このあたり、Kさんのご意見は「研究室」という単位を持たない数学科の事情もあると思うし、お金のかからない研究をする分野の方であれば、自分の研究室を持っていてもさほど影響はないように思う。
ただ、現状と今後において「(旧)国立大学は営利企業ではありません」ということを言い続けることは可能なのだろうか?
「ハーバードは年間何億円稼いでいます」という話を聞かされると、日本では同じ状況にはないと思いつつ、でもそういう方向にむかっているのだろうかと心配になる。

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それで思い出したが、ついに、ハーバードでは「ヒトクローンES細胞プロジェクト」に着手することになったという報道があった。
アメリカでは「政府の科研費ではヒトクローンES細胞を作製することは認めない」ことになっているのだが、日本よりはるかに民間団体の研究費があるため、そういう研究費は政府の制御下にはない、という扱いになっている。
これは巧妙なやり方で、でも実際は難病の患者団体等を介する形でかなり大型の研究費が投じられることになる。

私としては市民レベルで「一卵性双生児はクローンです」→「クローンであっても別人格」ということを、きちんと理解してもらうことが大前提かなと思う。
by osumi1128 | 2006-06-15 01:27

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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