開かれた科学者コミュニティーに
2005年 04月 27日
とあるサイトに文章を頼まれたのですが、これはボツにした原稿です。
いずれ機会があれば、もう少し膨らませた文章にしたいと思っています。
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20世紀までの科学は「智としての科学」あるいは「知識のための科学」として目覚ましい発展を遂げた。しかしながら20世紀の科学はまた、環境汚染、食品安全の不安、社会ストレスの増加等の負の遺産を我々に残すことになった。同時に、それぞれの分野は細分化され、より専門化していき、科学者の間でさえ分野を超えた理解が困難に成りつつある。
21世紀に求められているのは「社会のための科学」である。日本の科学者コミュニティーはこの点を今以上に考慮すべきではないだろうか。「智としての科学」が科学の本質であり、それこそが科学の継続的な発展に重要なことは言うまでもない。また「社会のための科学」は、単純に「すぐ産業応用される科学」を意味する訳ではない。だが、科学者一人ひとりが立ち止まって、社会の中の自分の立ち位置を振り返り、社会に対してどのように貢献できるか考える余裕が必要だと思う。
科学者集団である研究機関や学会等は、社会に対して適切かつフレンドリーな情報発信をすることを心がけるべきである。ちょうど美術館や博物館にキュレーターが配置されているように、科学分野においてもホットな情報や研究の面白さを分かり易く噛み砕いて説明できる人材を多数養成し、そのような機会を提供する場を設けることが望まれる。小中高校の理科教師のために先端的科学分野の講義や簡単な実習を組むことも、さらに次世代の科学を支える上で必須であろう。科学者と企業人や市民が連携したNPOなどを通じての活動も考えられる。もはや科学者は象牙の塔に隠っている時代ではない。「社会のための科学」は市民との相互理解と協調によってこそ成り立つ。