研究打合せ

昨晩カフェの資料を作成し、寝ている間に、そうだ、自分の分だけではなくて、全体合わせたチラシもあるといいかも、と思いつき、朝からまたPagesに取り組んだ。
マニュアルを読むのが嫌いなタイプなので、すべて、アプリケーションの反応を見て、自分のしたいことと摺り合わせていく。
(そのため、仕上がりは必ずしもパーフェクトに自分の意図したものではなかったりするが、それはそれで仕方ない)
たぶん、これって、素朴な学習過程なのではないかなと思う。
これができなくなったら老化現象だと信じているので、とにかく、ときどきに自ら新しいことにチャレンジすることを心がけている。

今日は11時からジャーナルクラブだったので、その前に午後の研究打合せやらカフェの配付資料などの印刷を秘書さんにお願いしてから臨んだ。
うちのジャーナルクラブはD3以上は英語を基本とするので、たぶんそれなりにプレッシャーも大きい。
とくに、例えば本日の担当者はD3の学生さんで、初めて「英語プレゼンデビュー」の日だったので、(本人ばかりか)こちらもそれなりに襟を正して臨むような気持ちになる。
選んだ論文がきちんとまとまっていて、プレゼンスライドも流れが出来ていたし、本人の英語も、多分、かなり書いた文章を頭の中で繰り返して覚えた形跡もあるが、複文もかなり入っているくらいで、完成度は高かった。
・・・という訳で、ほっとする。
お疲れ様。

*****
午後は企業との研究打合せのミーティング。
うちの研究室の研究テーマの中で、いわゆる「出口に近い」研究である。
簡単に言うと、「脳を活かすための栄養」をテーマにしているのだが、S社の健康科学研究所の所長さんもいらしてのミーティングになった。

本来学問に貴賤はないはずなのだが、研究業界の人々の意識の中では、やはり純粋科学であったり、学問として確立した歴史の長い領域が尊ばれる傾向というのが感じられるときがある。
逆に、一般市民は「それは、どう役に立つのですか?」という即効性の回答を知りたがる傾向にある。
「栄養学」というのは、科学者の間で一般的には格下に思われることが多いのではなかろうか?
でも、私はとても大切な学問領域であると信じている。
これを軽んじたがために、さまざまな問題が生じていると思われる。
各種代謝病、癌、アレルギー、そして精神疾患など、現代社会で問題となっている疾患に、かなりの部分、食物の影響があることは間違いない。
問題は、これまでそれをきちんとサイエンスにしてこなかったことだと思う。

産学連携においても、国の予算はこの領域にはあまり投じられてこなかった。
「ものづくり」という言葉に象徴されるように、何か製品や材料や、そういったものを作ることに繋がる、あるいは分析のための器械の開発などにおいては莫大な税金がつぎ込まれたが、それぞれの体質に合った食べ物であったり、それを補うためのサプリメントを科学的に分析することは少なかった。
あるいは、分析されても、他の学問領域から、そのデータを尊ばれるだけのものではなかった。

医食同源という言葉、あるいは「You are what you eat」という言葉には、先人達が食べ物を大事に考えた名残があるにもかかわらず、多くの人の意識から、季節に合った食べ物や、体質に合った調理法、その日の活動に応じた味付けなどのノウハウが抜け落ちているのが現代社会だ。
もちろん、24時間営業しているコンビニでは、何でも売っているし、たいていその中に欲しいものはあるだろう。
でもたぶん、人はコンビニだけに頼って生活してはならない。
工場で作られた食べ物だけを食べていてはいけない。

この20年くらいの医者の食事指導で、たぶん間違っていることは「コレステロールを含む食品は悪」というものだと思う。
確かに、血中コレステロールの値が高いことは心臓発作等のリスクファクターであることは間違いないが、だからといって、肉や卵を食べない方がよい、というのは大きな誤解である。
昔は、卵は「病人さんの食べるもの」であるくらい、栄養価の高いものと見なされていたが、この感覚が正しい。
つまり、沢山食べるべきではないが、体が弱っているときには即効性のある栄養素を含む、ということだ。

基本的に「美味しいもの」は「体にいいもの」である。
この場合の「美味しいもの」は、ジャンクフードの耽溺性とはとは異なる。
美味しい味とは、糖や脂肪の甘みであり、コラーゲン質の食感である。
進化を経て確立された感覚を失ってはならない。

*****
早稲田の事件は論文捏造疑惑にまで発展している。
他の研究者から「再現性が得られない」とされている論文の成果をもとに、巨額の研究費が支払われ、そこから私的流用されたのだとしたら、何重にもがっかりすることである。
しかも、そのかなりの部分が「振興調整費」という枠であったため、「女性研究者育成モデル事業」なども、今年の予算に関してとばっちりを受けることになりそうだ。
その原因が一女性研究者にあったかと思うと、やるせない気持ちである。

さて、いよいよ明日がサイエンスカフェ。
皆で楽しまなければ!
by osumi1128 | 2006-06-30 02:30

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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