International Stem Cell Forum

東京出張している間に沢山のコメントを頂きました。
ほかに、学術会議シンポジウムの主催者・メインスピーカー等の間のメールがやりとりされ、次のようなサイトでそれが取り上げられました。

ジェンダーとメディア・ブログ
BREAK FREE

とくに後者では、フロアからの私の発言に対して痛烈な批判を載せていますので、これまでのエントリーを読まれた方は(とくに生物系の方は)是非、ご一読下さい。
生物学者がジェンダー学者と何故対話できないのか、その背景や感覚の違いを知るのに良いと思います。

生物学者はあくまで対象を「客観視」しようとします。
自分の感情を入れずに物事を捉える訓練を積みます。
そしてそれは、対象が動物である、研究対象である、という点において、人間社会とは一線を画して捉えます。
したがって、例えば、山元先生が発見された「雌に興味を示さない雄」は、通常の雄とは異なる行動を取るので「おかしいな。何故なんだろう?」と注目されます。
こういうナイーブな生物学者の心理が
まず、この人、メスに興味を示さないオスの行動を『おかしな』と表現した。この時点で彼女の人権問題への意識レベルが示されたというものだ。

という風に受け取られる、というのが現実です。

「サトリ」という遺伝子変異体の名前も、その後上野先生から主催者に宛てられたメールでは「何故そのようなジェンダー的解釈をするのか?」という問いかけがありました。
世の中全体が「そいうことはケシカラン」という体制になったら、生物学者は変異体や遺伝子の名前を付けるときに、「ジェンダー的視点」を考慮しないといけないということですね。
ちなみに、「サトリ」の原因遺伝子は山元先生のところとは別のグループの名前が残って、fruitlessと呼ばれています。

繰り返し主張している<ブレンダの症例>を持ち出すのは不適切なので止めた方がよいですよ、という批判もBREAK FREEというブログの中では
性は先天的、遺伝子的に決まっているのであり、その後の社会的影響で女男が変わるわけではない

と言った、と決めつけられてしまいます。
僕たちが議論しているのは文化、言語を持った人間である。ラットやショウジョウバエを男女2分カテゴリーの証拠として持ち出すことの愚かさに何故気付かない?


私から見たら、身体的に雄のハエでも脳は雌型というものがいました、という事例や、束村さんが取り上げた、ホルモン注射で雌を雄化したラットは、「男女二分」ではまったくないと思うのに、何故このように型にはまった考え方になるのだろう?

いくら、こちらが対話しようとしても、「自分たちが扱うのは、男女二元論で語ることの限界と人権的問題、そしてその差が権力に利用されている可能性、生物学的違いとされるもののうち、社会的影響をうけているのはどの程度あるのか、またその「差」が持つ政治性」なのだと主張されたら、はあ、そうですか、ではどうぞそれはジェンダー学という狭い世界でやっていて下さい、生物学者は生物学者同士で(あるいは他の自然科学者との間で)対話します、ということになってしまいますね・・・

これでめげては学術会議シンポジウムの主催者に申し訳ないので、一応、上記のブログの主催者にはTBしておくつもりです。
「対話」をしようという場なのですから、お互いに批判することも、歩み寄ることも必要だと思います。

*****
という話が長くなってしまったのだが、本日のエントリーのタイトルである
International Stem Cell Forumは幹細胞研究の国際的な連携を図ろうという組織である。
今後、再生医療の実現化を目指してヒトES細胞の標準化や国際的細胞バンクの設立などを行うことを目的として組織されている。
実は今日の話の本題は幹細胞研究でもES細胞でもない。
この組織に参加しているのは各国のfunding agenciesが多いのだが、それらの組織から実際に会議に出ているメンバーを見ると、海外ではいわゆる現場の研究者ではなくても博士号を持っている方がほとんどだということに気が付いた。
(HPには残念ながらそこまで載っていなかった)
つまり、英国のMedical Research Councilにしろ、米国のNational Institute of Healthにしろ、それに相当する他の国の組織にしろ、博士号を持った人がそれ相当funding agenciesで働いているということの一端を表しているのだろうということが推測された。
日本の科学技術行政の現場にも、もっと博士号を持った人材や、ポスドクまで経験した人材などが活躍できるようになってほしいと思った次第。
そうでないと、トップダウンの競争的資金をどのよう配分すべきか、どのように現場が使いやすく、かつ行政サイドにも負担がかからないか、などのシステムをうまく構築できないと思う。
by osumi1128 | 2006-07-13 00:50

大隅典子の個人ブログです。所属する組織の意見を代表するものではありません。


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