
ちょうど昨日でWorkshopの半分が終わったところである。
時差はほぼ取れたように思うが、午前中の方がシャープなのは、やっぱり日本時間を引きずっているかもしれない(私は夜型なので)。
講義はとてもリラックスした雰囲気で進んでいる。
ときには、誰かの質問で15分くらいディスカッションが続いたりするのも、参加者の理解レベルと興味に合わせた講義になるという点で意義深い。
1つの講義はだいたい90-120分単位であるというのも、十分な議論をするのに必要だと思う。
これは、数年前からうちの医学部の講義を90分単位から60分に変えたということがあり、全体の授業時間を短くして、学生の自主的な勉強の時間を増やそうということだったのだが、私は個人的にはこれに反対の立場である。
ちょうど、高校の教科書が薄っぺらいものになってしまったように、エッセンスだけを一方的に教えてもつまらない講義にしかならない。
ここの講義室では無線LANが使えるので、講師の話を聞きながら、引用されている論文をすぐにweb searchしてダウンロードして確認するなんてこともできる。
飲み物を飲みながら、人によっては朝ご飯を食べながら聴いている人もいる。
ただし、寝ている人はいない(時差ぼけだった私が最初の2日くらいの夜のセッションで居眠りしていた以外は)。
講師としてもやりがいのある講義であろうと思う。
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さて、今ちょうどランチタイムで、一つ前のエントリーにすでに沢山のコメントを頂いたことを確認しました。
敢えてチャレンジとして問題のあるテーマを挙げているのは、いろいろなご意見を頂くことが目的です。
ただ、どうも書いていないことを勝手に解釈されているコメントがありますので、一言だけここに書いておきます。
理系少女エンカレッジを標榜している私は、女性が理系に向いていないとはまったく思っていません。
15歳の時点での数学リテラシーに差が無いというようなデータもありますし、同じような統計は調べれば他にもあるでしょう。
何故、書いていないことを勝手に推測されるのか、理解に苦しみます。
同様に、アフリカンアメリカンで(少なくとも)生物学の研究者が少ないことについて
「何故か?」という問いかけは、その答えが純粋に社会的なものであるのであれば、その証拠を挙げて頂けば良いわけで、私自身が「アフリカンアメリカンは生物学者には向いていない」と思っている訳ではまったくありません。
(どこにもそのようには書いていません)
※そういえば、先日のIUBMBの共同参画シンポジウムでお話頂いたCarol Carterさんはアフリカンアメリカンでした。
日本人は相対的にはうつなのか?(この言い方は誇張です)ということに関しては、誰かが面白いテーマだと思って頂ければ、社会的考察、生物学的検証等を行って下さればよいと思っています。
やはり一番気になるのは、このSchizophreniaに関するWorkshopでは心理学を専攻している人も沢山参加しており、皆、細胞や遺伝子が何をしているのかを真剣に勉強しています。
こういう機会が日本では少ないのではないか、ということも指摘しておきたいと思います。
とりいそぎ、これにて。

それだけ皆さん、大学教授というものを大きな権威と見ているということでしょうか。
ついでに人種の差ですが、バリバリの生物学者の私からすれば、当然あります。私のアングロサクソン系同僚のデカイ手では手先の器用さが必要な実験が嫌いになるのは当然でしょう。純粋に遺伝的原因(脳の形成など)による心の働きの差異については分かりませんが。

>とについて「何故か?」という問いかけは、その答えが純粋に社会的な
>ものであるのであれば、その証拠を挙げて頂けば良いわけで、
>(どこにもそのようには書いていません)
いや、多数の海外の研究者と長年にわたって付き合ってきたにもかかわらず、「そりゃ、社会的要因(それも人種差別問題と大きく関わるような)でしょ」という【常識的解釈】に落ち着かず、小学生みたいな「素朴な疑問」を投げかけたことに、みんな衝撃を受けてるんです(どういう社会的要因があるのかについては詳しく知らないことはあり得ますが)。
だから私は、「社会的要因は実はそうでもなさそうだ」と感じさせるような、あるいは【常識的解釈】を疑わしめるような事件があったのかと思いましたが、そうでもなさそうですね。
「アメリカについての一般常識だよ」とか、一方的にハードルを設定して大隅先生を貶めるつもりはありませんが、「理系少女エンカレッジを標榜」しているのなら、なおさら社会的要因が真っ先に浮かんでおかしくないはずなのに、どうしてゲノムが出てくるのか、そりゃみんな不思議がるでしょう。

このブログのおかげで、遺伝子と心理学をつなぐような本を読む機会が増えました。刺激的ではありますが(時に強すぎる?)、こういうディスカッションの場を提供してくださるこのブログは勉強になります。ありがとうございます。

「白人・黒人」のような一般的な言い方なら(逆説的に)聞く側もそこに遺伝的多様性があることを言わずもがなに感じることができますが、そうした言葉を(政治的に?)嫌って「人種」という言葉を使ってしまうと不思議なことに生物学的に意味を持つ特異的なゲノム集団という匂いが漂います。
現在の研究からは、何らかの一群の連鎖遺伝子群をもつ集団としての人種の存在は確認されていません。ひとつ前のエントリーのありゃまさんの言うような集団内のheterogenuityの方が大きいのです。もちろん、その出現分布によって(任意の)集団の遺伝的な特徴付けはできますが、それと「人種の差」とはまったくもって似て非なるものです。

とのことですが、
>「遺伝子はあらゆる生命現象に関係する。ただし、すべて遺伝子で決まる訳ではない。」ということは、まだまだ一般の人たちに伝えていかなければならないと思う。
と書かれて、次に
>(こちらの方がより生物学的であり、遺伝要因が大きいと思うが)、活動量である。
そして最後に、
>それとも、学問なんて面白いと思わない、という指向性があるのだろうか?
と来れば、アフリカンアメリカンは学問を面白くないと遺伝的に決まっているかもと主張していると受け取られて仕方ないと思います。
前のshaking baby syndromeの後のエントリーでも気になりましたが、”地雷”という言葉も、話題を真面目に受け取っていない印象を受けました。
厳しい言い方をさせていただければ、医学は社会なしでは意味を持たない学問なのに、医学部の教授が社会と科学の関わりについて、この程度の意識しか無いのかと驚かされます。



大隅氏のような権威ある肩書きを持つ方が「バリバリの生物学者」として
このような発言をなさっていること自体が問題なのだと思います。
ご自分の立場や影響力をお考えになるべきです。
だから人文系の方よりも、むしろ同業の方の批判が多いのではないでしょうか?
いろいろな意見を聞きたい、とのことですが、それならまず、
そのCarol Carterさんというアフリカンアメリカンの研究者に、
生物学の世界ではアフリカンアメリカンが限りなく少ないのは
他人種と比べて優位差があるからなのか?
オリンピック選手やメジャーリーがになる方が有利だと思うからなのか?
学問なんて面白いと思わない、という指向性があるのか?
とでも聞いてみてはいかがだったのでしょう?
「敢えてチャレンジとして問題のあるテーマを挙げている」のであれば
地雷を踏んだことにもなるのでしょうが、
大隅氏のなさっていることは自爆にしか感じられません。