自著について・その1

本好き(な方)である。
これは父から受け継いでいるらしい。
専ら読む方が圧倒的だが、これまでに5冊の本を出した(チャプターのみのものは除く)。

話はだいぶ昔に遡る。
お正月に両親の仲人をされた湯浅明という先生のお宅に伺うという習慣があった。
この先生は「細胞学」(細胞生物学以前)がご専門であったが、沢山の本を著しておられた。
中学生くらいのときだったのだろうか、「積み重ねて自分の背丈になるくらい本を書きたい」というようなことを仰られたことだけ、妙に覚えている。
成る程、学者というものはそういうものか、と印象に残った。

さて、一番最初の出版物は、大学の学部時代に母親から「アルバイトする(してくれない)?」ということで書いた、『微生物学入門』という本の翻訳。
自分の担当分はとても少なく、でもまだ細々ながら売られているので、毎年微々たる印税が振り込まれる。

印税が振り込まれるロングセラーは他にもあって、『免疫染色・in situハイブリダイゼーション法』のマニュアル本がよく売れている。
これは、野地澄晴先生という方にお声がけしていただき、チャプター2つくらいに貢献した。

野地先生には研究の面でも多大なお世話になり、きっとそのことはまた別の折に書いてみようと思うが、やはり「書くこと」がお好きな方である。
助手時代に「どうしたらそんなに沢山書けるのでしょうか?」とお聞きすると、「隙間の時間でも、書けばそれだけ溜まっていくものだ」と仰った。
当時はそういう時間の使い方ができなかったが、この言葉はしっかりと心に刻み込まれた。

自分の名前が出た本のその次はずっと下って、1996年に『神経堤細胞』という本を倉谷滋さんと共著で出した。
これも、ほとんどの部分は倉谷さんが書いたようなものであるが、互いの書いた部分を校正したりして、「本を書く」という貴重な経験をさせて頂いた。

自分の意志で本を出そうと思った最初は『エッセンシャル発生生物学』である。
これはJonathan Slackという発生生物学者の書かれた教科書の翻訳である。
きっかけは、東北大学の歯学部の学生相手に「発生学」のコースを教えることになり、もう一度おさらいしようと思って、この比較的短い本を読んだことである。
発生生物学の分野ではScott Guilbertの大著があるのだが、これは百科事典的で、大学院生以上のレベルなので、もっとコンパクトなものを日本語で読めるようにすることは喜ばれるだろう、と考えて翻訳を始めた。

・・・以下続く。
(このサイトの投稿は、途中で止めておくという機能がないのが残念です。)
by osumi1128 | 2005-04-29 12:58

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